笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―１１

チャプタ―１１

右衛門は、見たくないものを見つけてしまう。
　騎乗して長柄槍部隊を長柄頭として指揮していた清次郎が落馬した。
　渠の脇からは大量の血が流れ出している――清次郎は銃丸(じゅうがん)を受けてなお、配下の者を激励していたのだ。血の嫌いな人間が、それでも必死に。
　だが、ついには力尽きてしまった。
「己の身を守れる術を教えて進ぜよう」と刀術の稽古と聞いて嫌がる市右衛門に淡くほほ笑んだ人が。
　あの言葉で、人の命を奪う技の稽古、という思いをいくらかは払拭することができ、鍛練にもそれなりに前向きに励めたのだ。
「あ、あああ……」
　川を挟んで事態をただただ見守るだけの傍観者になりながら、市右衛門は声にならない声を漏らす。
　どんな言葉を口にすればいいのか分からないのだ。
　喪失感だけが、総身を叩く雨粒よりも冷え冷えとした心地を感じさせている。

　しかし過酷な運命は、なお進行中だ――。