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 関破りの一環であり、かつ体調を崩した吉兵衛の家中の江戸家老の吉田内記の治療のためだ。
 なんとか衰弱から立ち直りどうにか歩けるようになった内記だったが、やはり弱っていたのが祟ったか風邪を引いた。しかもみるみる症状は悪化したのだ。それで、これは捨て置けないとなり又一郎と千太郎の提案で彼らが知る山の民のもとを訪れたのだ。
「あちこち、それも人目を忍んで歩いてりゃあ、嫌でもこういう連中と繋がりができるのさ」というのは又一郎の言だ。
 山の民の長が煎じた薬を飲んで眠りについた内記の熱がじょじょにさがりはじめたのを見届け、平太たちは集落をあとにした。先行して源太郎丸を江戸藩邸にとどけ、家老は後から送り届けるという算段になったのだ。
 ここまでひそか追ってきていた桃を、又一郎が犬笛で呼び寄せて首輪の竹筒にそのことを頼む文を入れて、あとから追ってきているはずの加勢の者たちに知らせた。
無事に知らせが届けば、平太たちはもどってきて内記を送り届ける手間は省ける。
ただ、それよりもまず平太たちは自分の心配をしなければならない。
関破りをするということは、相手が遠慮会釈なく襲撃を仕掛けることが可能、ということを意味するからだ。
山の民の若者に先導されながら、下草をかき分け枝を振り払いながら山のなかを進んだ。
鳥の鳴き声が途切れることなくつづき、時折、狐や狸、鼬という動物たちと顔を合わせることになった。
 我慢強くなったものの、やはり子どもの源太郎丸が途中で足取りを鈍らせたため、平太たちは交代で彼を負ぶって歩いた。
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