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 片手で源太郎丸の手を引いている。危険だからどこかに隠れさせるようか、とも又一郎と話し合ったのだが結局、「目の届くところにおいておくに限るさ」という結論に至ったのだ。
 さらには、側には紋の姿もある。危険だからついてくるな、と言ったのだが「なあに、女だからって舐めるんじゃないよ」といって聞かなかったのだ。
 結果、女子ども連れで破落戸の根城に突撃を試みるという仕儀になっている。こうなると、頼みの綱は吉兵衛、ということになった。忍び相手に苦戦はしたものの、平太の見たところ自分と同等以上の技倆を備えているのは知っているから、ある程度心を落ちつけていられた。
 ただ危惧とは裏腹に、又一郎と千太郎のお陰でやくざ者たちはあらかた出払っており屋敷に近づくのは楽だった。事前に放った火矢も効果を発揮し、村の外縁部では騒動が持ち上がっている。それが、よけいに平太たちの気配を薄いものにしてくれていた。
 しかし、最後までことが上手く運ぶとは平太も考えていない。名主の屋敷の前に来たところで、人影が表に現れたのだ。
「あっしは死左衛門がひとり、彦左衛門。覚悟しな」
「こいつはあたしに任せな」
 とたん、紋が真剣な声で言い放つ。その手には早くも剥き身の長脇差がにぎられていた。構えからしてそれなりに使えそうだ。
「承知した」
 平太は小走りのまま屋敷の勝手口のほうへと向かう。
「待ちやがれ」と彦左衛門がまわりこもうとするが、それを紋が斬りかかって封じた。
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