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 とたん、百姓家から無数の影が銀光をつらねて飛び出してくる。手槍をたずさえたやくざ者どもだ。
「槍衾一家の本領発揮ってところかい?」
 弓を腕に通して千太郎は大身槍の柄をつかむ。
 もうひとり鉄砲の放ち手がいないとも限らないために家屋に身を寄せて、槍を持った連中が近づいてくるのを待った。
 そして、彼らが名主の屋敷に対して死角を生む位置まで来たところで躍り出る。
 刃風一颯、大身槍を横薙ぎにふるった。無数の物を断つ感触がてのひらにつたわる。
「なんだ、その得物は」「こけおどしなんぞで腰が引けると思うなよ」
 やくざ者たちが、一瞬身をすくませるがどうやら体に斬撃を浴びていないようだ、と悟ったとたんにおどろきや強がりの声をあげた。
「おまえさんたち、体は無事でも得物が無事とは限らないんじゃないかい?」
 千太郎がたずねるのと、やくざ者たちの槍のけら首が柄からずり落ちて地面にぶつかって音を立てるのがほぼ同時だ。五つの槍穂が地面で輝きを放つ。
 瞬間、やくざ者たちの目がみずからの得物の先っぽに吸い寄せられる。得物が単なる棒になったと知り顔から血の気を引かせた。
「穂先を失えば棒術で戦うのが武士、ってもんなんだけどねえ。おまえさんたちにそれを求めるのは酷ってもんだろうね」
 独語とともに千太郎は大身槍を唸らせる。袈裟斬りに近い動きでふるわれた得物は敵のひとりをほぼ斜めに斬割した。迅雷の速度で攻撃はつづく、ひるがえった槍の石突がもうひとりの喉を“潰した”。
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