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とたん、平太もまた立ち止まる。四肢を脱力させ、いかなる事態にも対応できるように準備した。だから“硬い”――脳裏に叔父の言葉が不意によみがえるのを歯噛みして追い払う。
刹那、風切り音がひびいた。頭上――思ってもみなかった方向に若干うろたえながら平太は三度笠を手にして薙いだ。異音をそれで掻き消した。
硬い感触が手のひらにつたわる。視界の隅では、笠に十字手裏剣が突き刺さっているのをとらえていた。十字手裏剣はあくまで陽動――師である叔父の言葉を思い出しながら平太は視線を油断なく周囲に巡らせた。
刹那、影が木陰から躍り出てくる。銀光一閃、すかさず平太はそれを迎撃した。
「平太、それは陽動だ」
又一郎が怒鳴る声が平太の油断を阻止する。言われた瞬間、平太も合羽が投げ出されたことを理解した。
平太が体勢を整えるよりも迅影が間近にせまるほうが速い。
銀光一閃、肩口に襲いかかった斬撃を足の踏み替えで辛うじて躱した。が、剣尖がかすめて熱した火箸で引っかかられたような感触が肩から、手首にかけて走る。
平太の腕が電光と化した。お返しとばかりに、商人態の男に向けて長脇差をふるう。
が、相手は化鳥のごとく飛んで攻撃を軽々と躱した。次の瞬間、敵の姿は木立に紛れる。
どこだ、と考えると同時に視野の端を影が動くのを平太は感じた。
刃風一颯、牽制、運がよければ傷を負わせられるという目算で下段に長脇差を薙いだ。
跳躍、ふたたび攻撃はあっけなく回避される。兵法者の歩法を使ったものとは違う、肉体自体を鍛え上げることでより超人じみた動作を可能にしている、そんな雰囲気の動きだった。
視界の隅では、又一郎も似たような機敏な相手と剣戟を交わしているのが視界に入る。鎖鎌を遣う男で、分銅を巧みに使って容易に距離を近づかせない。あきらかに、業前で劣るほうを先に片づけ、改めて二対一に持ち込んで又一郎を片づける肚づもりであることが透けて見えている。
転瞬、平太の体勢が崩れたところに敵が肉薄した。
刹那、風切り音がひびいた。頭上――思ってもみなかった方向に若干うろたえながら平太は三度笠を手にして薙いだ。異音をそれで掻き消した。
硬い感触が手のひらにつたわる。視界の隅では、笠に十字手裏剣が突き刺さっているのをとらえていた。十字手裏剣はあくまで陽動――師である叔父の言葉を思い出しながら平太は視線を油断なく周囲に巡らせた。
刹那、影が木陰から躍り出てくる。銀光一閃、すかさず平太はそれを迎撃した。
「平太、それは陽動だ」
又一郎が怒鳴る声が平太の油断を阻止する。言われた瞬間、平太も合羽が投げ出されたことを理解した。
平太が体勢を整えるよりも迅影が間近にせまるほうが速い。
銀光一閃、肩口に襲いかかった斬撃を足の踏み替えで辛うじて躱した。が、剣尖がかすめて熱した火箸で引っかかられたような感触が肩から、手首にかけて走る。
平太の腕が電光と化した。お返しとばかりに、商人態の男に向けて長脇差をふるう。
が、相手は化鳥のごとく飛んで攻撃を軽々と躱した。次の瞬間、敵の姿は木立に紛れる。
どこだ、と考えると同時に視野の端を影が動くのを平太は感じた。
刃風一颯、牽制、運がよければ傷を負わせられるという目算で下段に長脇差を薙いだ。
跳躍、ふたたび攻撃はあっけなく回避される。兵法者の歩法を使ったものとは違う、肉体自体を鍛え上げることでより超人じみた動作を可能にしている、そんな雰囲気の動きだった。
視界の隅では、又一郎も似たような機敏な相手と剣戟を交わしているのが視界に入る。鎖鎌を遣う男で、分銅を巧みに使って容易に距離を近づかせない。あきらかに、業前で劣るほうを先に片づけ、改めて二対一に持ち込んで又一郎を片づける肚づもりであることが透けて見えている。
転瞬、平太の体勢が崩れたところに敵が肉薄した。
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