40 / 159
40
しおりを挟む
門左衛門に素手で立ち向かうのは無謀だ。となれば、
三下の野郎から長脇差を奪う――。
攻撃を待つ間に背中を丸めた姿勢をとっていた平太は飛び込むように相手に詰め寄った。
刹那、平太のひざに向けて門左衛門の蹴りが叩き込まれる。
そのはずだった。が、門左衛門は悲鳴をあげて転倒することになった。突如として現れた一匹の犬に腿を噛まれたのだ。
平太はおどろく。それでも身体は動いていた。好都合なことに、相手の無宿こそ驚愕で動きが鈍る。電光石火、柔(やわら)の動きで長脇差を奪い捕った。相手の目には手妻のように映ったはずだ。閃、相手が自分の手から得物が消えたことを認めた瞬間には喉首を裂いていた。
転瞬、平太は門左衛門のほうへと向き直る。
犬は門左衛門からはなれ、平太の側へと移動していた。門左衛門に身体を向けながらも畜生はこちらにつぶらな目を向けている。とたん、平太の脳裏にひらめくものがった。
「まさか、てめえが親分のいってた仲間なのか?」
平太がたずねるや、犬が一声吠(ほ)える。
「糞、ふざけやがって。その畜生はてめえのもんか」
蹴倒しの門左は、血で汚れた腿を片手で抑えながらすさまじい形相でこちらを睨んだ。
「畜生はてめえだろう、女を拐すような痴れ者(もん)が“吠える”な」
平太は相手を皮肉りながら刺突の構えをとる。
三下の野郎から長脇差を奪う――。
攻撃を待つ間に背中を丸めた姿勢をとっていた平太は飛び込むように相手に詰め寄った。
刹那、平太のひざに向けて門左衛門の蹴りが叩き込まれる。
そのはずだった。が、門左衛門は悲鳴をあげて転倒することになった。突如として現れた一匹の犬に腿を噛まれたのだ。
平太はおどろく。それでも身体は動いていた。好都合なことに、相手の無宿こそ驚愕で動きが鈍る。電光石火、柔(やわら)の動きで長脇差を奪い捕った。相手の目には手妻のように映ったはずだ。閃、相手が自分の手から得物が消えたことを認めた瞬間には喉首を裂いていた。
転瞬、平太は門左衛門のほうへと向き直る。
犬は門左衛門からはなれ、平太の側へと移動していた。門左衛門に身体を向けながらも畜生はこちらにつぶらな目を向けている。とたん、平太の脳裏にひらめくものがった。
「まさか、てめえが親分のいってた仲間なのか?」
平太がたずねるや、犬が一声吠(ほ)える。
「糞、ふざけやがって。その畜生はてめえのもんか」
蹴倒しの門左は、血で汚れた腿を片手で抑えながらすさまじい形相でこちらを睨んだ。
「畜生はてめえだろう、女を拐すような痴れ者(もん)が“吠える”な」
平太は相手を皮肉りながら刺突の構えをとる。
10
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 四の巻
初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。
1940年10月、帝都空襲の報復に、連合艦隊はアイスランド攻略を目指す。
霧深き北海で戦艦や空母が激突する!
「寒いのは苦手だよ」
「小説家になろう」と同時公開。
第四巻全23話
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
富嶽を駆けよ
有馬桓次郎
歴史・時代
★☆★ 第10回歴史・時代小説大賞〈あの時代の名脇役賞〉受賞作 ★☆★
https://www.alphapolis.co.jp/prize/result/853000200
天保三年。
尾張藩江戸屋敷の奥女中を勤めていた辰は、身長五尺七寸の大女。
嫁入りが決まって奉公も明けていたが、女人禁足の山・富士の山頂に立つという夢のため、養父と衝突しつつもなお深川で一人暮らしを続けている。
許婚の万次郎の口利きで富士講の大先達・小谷三志と面会した辰は、小谷翁の手引きで遂に富士山への登拝を決行する。
しかし人目を避けるために選ばれたその日程は、閉山から一ヶ月が経った長月二十六日。人跡の絶えた富士山は、五合目から上が完全に真冬となっていた。
逆巻く暴風、身を切る寒気、そして高山病……数多の試練を乗り越え、無事に富士山頂へ辿りつくことができた辰であったが──。
江戸後期、史上初の富士山女性登頂者「高山たつ」の挑戦を描く冒険記。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる