7 / 159
7
しおりを挟む
「そんなことあるわけないでしょう、兄貴」
「ということは、あれか?」
「なんですか?」
嫌な予感をおぼえながらも聞き返す平太から、又一郎は心持ち距離を空ける。
「おめえさん、男が好きな性質(たち)か?」
「兄貴はどうしても、俺をおかしな奴に仕立てあげたいんですか!」
「む、違(ちげ)えのか」
「当然です」どう見ても面白がっている又一郎に平太は大きく顎を引いた。
「じゃあ、どうして嫁をもらわん?」「それは」
祖母とのやり取りでそのことに思いを巡らせたばかりだ。が、村の暮らしに縛られるのが嫌で、などと明かす気にはなれない。何の取り得もない自分が百姓を辞めたところで待っているのは渡世人としての暮らしが精々だろう。賭場には出入りしていても、それには抵抗を覚えるのが本音だ。
「当ててやろうか?」又一郎が妙に自信のある顔つきをした。「お前は村に縛られるのが嫌なのさ」
つづけて発された言葉に、先ほどとは違った意味で平太は息を詰まらせる。まさか、本音を見抜かれるとは思わなかった。
「伊達にあちこちを渡り歩いちゃいないさ」
平太の無言の反応から答えを勝手に読み取った又一郎が得意げに口角をあげる。
「ということは、あれか?」
「なんですか?」
嫌な予感をおぼえながらも聞き返す平太から、又一郎は心持ち距離を空ける。
「おめえさん、男が好きな性質(たち)か?」
「兄貴はどうしても、俺をおかしな奴に仕立てあげたいんですか!」
「む、違(ちげ)えのか」
「当然です」どう見ても面白がっている又一郎に平太は大きく顎を引いた。
「じゃあ、どうして嫁をもらわん?」「それは」
祖母とのやり取りでそのことに思いを巡らせたばかりだ。が、村の暮らしに縛られるのが嫌で、などと明かす気にはなれない。何の取り得もない自分が百姓を辞めたところで待っているのは渡世人としての暮らしが精々だろう。賭場には出入りしていても、それには抵抗を覚えるのが本音だ。
「当ててやろうか?」又一郎が妙に自信のある顔つきをした。「お前は村に縛られるのが嫌なのさ」
つづけて発された言葉に、先ほどとは違った意味で平太は息を詰まらせる。まさか、本音を見抜かれるとは思わなかった。
「伊達にあちこちを渡り歩いちゃいないさ」
平太の無言の反応から答えを勝手に読み取った又一郎が得意げに口角をあげる。
10
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 四の巻
初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。
1940年10月、帝都空襲の報復に、連合艦隊はアイスランド攻略を目指す。
霧深き北海で戦艦や空母が激突する!
「寒いのは苦手だよ」
「小説家になろう」と同時公開。
第四巻全23話
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる