152 / 158
164
しおりを挟む
広純が倒れた場合の取決めはないが、指示を与えたほうが動きやすいだろうという判断だ。果たして、二度、三度と窮地をともにくぐり抜けてき彼らは見事に応じる。突如として騒音が夜気を激しく震わせた。
陣鉦だ。冷泉家から借り受けてものだった。それを突破三人が激しく打ち鳴らしているのだ。
久脩の視界でメルショルが口を動かしているのが見えるが声は切れ切れにしか聞こえてこない。それは識神たちにしてみたところで同じだろう。結果、指示は識神に届かない。
電光石火、突破たちが棒手裏剣を喉や、心の臓といった急所へと放った。体を支える棒を折られた案山子のごとく識神たちが立てつづけに倒れる。
転瞬、銃声がとどろいた。
久脩は身を固くする。が、すぐに自分が撃たれていないことを悟った。視界で陣鉦を鳴らしていた突破が倒れる。直後、代わりの者が陣鉦を手に打ち響かせた。痛みの衝撃も感じなかったのだ。
他方、メルショルは識神たちひとりひとりに駆け寄り耳元で下知をつたえる策に出ていた。手間だが着実に効果がある。単純だがこちらにとって看過できない行為だ。
動き出す識神、それを突破の棒手裏剣が迎えうつ。
「それ以上、させぬッ」
体がふくれ上がったかと錯覚するほどに殺気を漲らせ、久脩は迅影と化してメルショルへと迫った。
陣鉦だ。冷泉家から借り受けてものだった。それを突破三人が激しく打ち鳴らしているのだ。
久脩の視界でメルショルが口を動かしているのが見えるが声は切れ切れにしか聞こえてこない。それは識神たちにしてみたところで同じだろう。結果、指示は識神に届かない。
電光石火、突破たちが棒手裏剣を喉や、心の臓といった急所へと放った。体を支える棒を折られた案山子のごとく識神たちが立てつづけに倒れる。
転瞬、銃声がとどろいた。
久脩は身を固くする。が、すぐに自分が撃たれていないことを悟った。視界で陣鉦を鳴らしていた突破が倒れる。直後、代わりの者が陣鉦を手に打ち響かせた。痛みの衝撃も感じなかったのだ。
他方、メルショルは識神たちひとりひとりに駆け寄り耳元で下知をつたえる策に出ていた。手間だが着実に効果がある。単純だがこちらにとって看過できない行為だ。
動き出す識神、それを突破の棒手裏剣が迎えうつ。
「それ以上、させぬッ」
体がふくれ上がったかと錯覚するほどに殺気を漲らせ、久脩は迅影と化してメルショルへと迫った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)
牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品) とある権力者が死に瀕し、富士の山に眠っているという不死の薬を求める。巡り巡って、薬の探索の役目が主人の藤原忠平を通して将門へと下される。そんな彼のもとに朝廷は、朝廷との共存の道を選んだ山の民の一派から人材を派遣する。冬山に挑む将門たち。麓で狼に襲われ、さらに山を登っていると吹雪が行く手を阻む――
明日の海
山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。
世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか
主な登場人物
艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田
渡世人飛脚旅(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
牛馬走
歴史・時代
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)水呑百姓の平太は、体の不自由な祖母を養いながら、未来に希望を持てずに生きていた。平太は、賭場で無宿(浪人)を鮮やかに斃す。その折、親分に渡世人飛脚に誘われる。渡世人飛脚とは、あちこちを歩き回る渡世人を利用した闇の運送業のことを云う――
鄧禹
橘誠治
歴史・時代
再掲になります。
約二千年前、古代中国初の長期統一王朝・前漢を簒奪して誕生した新帝国。
だが新も短命に終わると、群雄割拠の乱世に突入。
挫折と成功を繰り返しながら後漢帝国を建国する光武帝・劉秀の若き軍師・鄧禹の物語。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
歴史小説家では宮城谷昌光さんや司馬遼太郎さんが好きです。
歴史上の人物のことを知るにはやっぱり物語がある方が覚えやすい。
上記のお二人の他にもいろんな作家さんや、大和和紀さんの「あさきゆめみし」に代表される漫画家さんにぼくもたくさんお世話になりました。
ぼくは特に古代中国史が好きなので題材はそこに求めることが多いですが、その恩返しの気持ちも込めて、自分もいろんな人に、あまり詳しく知られていない歴史上の人物について物語を通して伝えてゆきたい。
そんな風に思いながら書いています。
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる