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 広純が倒れた場合の取決めはないが、指示を与えたほうが動きやすいだろうという判断だ。果たして、二度、三度と窮地をともにくぐり抜けてき彼らは見事に応じる。突如として騒音が夜気を激しく震わせた。
 陣鉦だ。冷泉家から借り受けてものだった。それを突破三人が激しく打ち鳴らしているのだ。
 久脩の視界でメルショルが口を動かしているのが見えるが声は切れ切れにしか聞こえてこない。それは識神たちにしてみたところで同じだろう。結果、指示は識神に届かない。
 電光石火、突破たちが棒手裏剣を喉や、心の臓といった急所へと放った。体を支える棒を折られた案山子のごとく識神たちが立てつづけに倒れる。
 転瞬、銃声がとどろいた。
 久脩は身を固くする。が、すぐに自分が撃たれていないことを悟った。視界で陣鉦を鳴らしていた突破が倒れる。直後、代わりの者が陣鉦を手に打ち響かせた。痛みの衝撃も感じなかったのだ。
 他方、メルショルは識神たちひとりひとりに駆け寄り耳元で下知をつたえる策に出ていた。手間だが着実に効果がある。単純だがこちらにとって看過できない行為だ。
 動き出す識神、それを突破の棒手裏剣が迎えうつ。
「それ以上、させぬッ」
 体がふくれ上がったかと錯覚するほどに殺気を漲らせ、久脩は迅影と化してメルショルへと迫った。
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