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公家ごとき一揉みに潰してくれるわ――。
夜道を牧を噛ませた馬に騎乗し軍兵に囲まれて進みながら、大村祐治は胸のうちでつぶやいた。音を殺して奇襲を企てる士卒の数は二百ほど、常識的に考えて戦国大名化に成功していない公家を討つには充分な戦力だ。
が、城につづく道を進むうちに祐治は眉をひそめることになる。
「あれは」
彼は目の当たりにしたのは、話に聞く織田信長が長篠の役でもちいたという馬防柵だった。数は十幾つと少ないが間違いない。
公家ごときが小癪な真似を――祐治は笑みを浮かべた。
いっそ、冷泉為純のことがいじらしくすら感じられる。確かに、馬防柵はそれなりに軍立場で威力を発揮しただろう。だが、信長の勝因の一位ではない。まず、単純に織田側の軍兵は圧倒的に武田に比べ多かった。そして、徳川麾下の兵に背後の城を落とされ退路を断たれたと早合点した武田の捨て鉢な行動が原因の第二位だ。
ために、馬防柵だけを真似たところで戦の趨勢は変わらぬ――。
祐治は勝利を確信しながら、采配をふりあげる。
とたん、陣太鼓、陣鉦がけたたましくなりひびいた。槍穂の銀光が津波となって馬防柵へとせまっていく。甲冑がこすれていっそう賑やかさを増させた。
それに紛れて、風を切る音が掻き消されたことにこの瞬間、気づかされる。
戦陣を切っていた軍兵が十数人が同時に転倒した。それに後続が巻き込まれた。一斉に混乱が起こる。
公家ごとき一揉みに潰してくれるわ――。
夜道を牧を噛ませた馬に騎乗し軍兵に囲まれて進みながら、大村祐治は胸のうちでつぶやいた。音を殺して奇襲を企てる士卒の数は二百ほど、常識的に考えて戦国大名化に成功していない公家を討つには充分な戦力だ。
が、城につづく道を進むうちに祐治は眉をひそめることになる。
「あれは」
彼は目の当たりにしたのは、話に聞く織田信長が長篠の役でもちいたという馬防柵だった。数は十幾つと少ないが間違いない。
公家ごときが小癪な真似を――祐治は笑みを浮かべた。
いっそ、冷泉為純のことがいじらしくすら感じられる。確かに、馬防柵はそれなりに軍立場で威力を発揮しただろう。だが、信長の勝因の一位ではない。まず、単純に織田側の軍兵は圧倒的に武田に比べ多かった。そして、徳川麾下の兵に背後の城を落とされ退路を断たれたと早合点した武田の捨て鉢な行動が原因の第二位だ。
ために、馬防柵だけを真似たところで戦の趨勢は変わらぬ――。
祐治は勝利を確信しながら、采配をふりあげる。
とたん、陣太鼓、陣鉦がけたたましくなりひびいた。槍穂の銀光が津波となって馬防柵へとせまっていく。甲冑がこすれていっそう賑やかさを増させた。
それに紛れて、風を切る音が掻き消されたことにこの瞬間、気づかされる。
戦陣を切っていた軍兵が十数人が同時に転倒した。それに後続が巻き込まれた。一斉に混乱が起こる。
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