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 が、両者共に無駄なことだ。まったくもって、どうしようもなく、他愛もない。
 無二は早合で手早く次弾の装填をしながらその光景を鼻で笑った。その折に、両の頬の傷跡が引きつるような感触があったような気がする。
 織田信長の雑賀攻めの折に、かの男を討ち取ろうとしたが襲撃を寸前で察知されて逆襲されたときに傷を負ったのだ。見たこともない、矢を放つ得物で狙われたのだがそれが頬を左右に貫通した。
 単に手傷を負った以上に、自分が“狙い撃たれた”ことが屈辱だ。いま思い出しても、体の芯から手足の先まで燃え上がるような思いがする。
 あやつ――聞くところによると、無二を射たのは朝廷にしたがう突破だということだった。
 権勢に立ち向かうことなく、こそこそ逃げ隠れする連中に――やられたのは屈辱だった。自主自立を重んじる雑賀の男として、その対極にいる連中に負けたというのは人生最大の恥辱だ。常に余人にせせら笑いを浴びせられているかのごとき心地がした。
 雪がねばならぬ、おのが手で――それが雑賀の男の矜持といえる。
 一枚岩ではなく、熱心な一向宗の門徒でもないが、それでも拠って立つものというものはある。いや、無類の強さを発揮する者ゆえにこそそういった者は人一倍必要だった。
 ましてや、上に誰も戴かずに自分の裁量で生きるのなら。
 息を詰めて、引き金を絞った。
 識神、操る人形と化した人間を獅子奮迅の働きで撃退していた、長巻をふるう壮年の村の男を仕留める。
 同じ地下ではあるが無二に罪の意識はない。早合の中身を銃口に移し、火蓋を切って銃身を水平とし、火皿に口薬(こうやく)(点火薬)を盛り付けて火蓋をふたたび閉じ、火挟みに火縄を挟んで火蓋を切って火皿を露出させる、それらの動きにはみじんの迷いもない。
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