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 一閃、それを為勝が股に薙刀の柄を差し込んで転ばせた。同時に叱声を飛ばす。
「よさぬか」「されど、兄上っ」
 このやり取りで、久脩は自分を襲ったのが為純の庶子だと理解する。
「この者のせいで御家が滅ぶのでございましょう」
 悲痛な顔で訴える幼子を前に、久脩は胸が音を立てて張り裂ける心地がした。
「これが乱世の習いなのだ、力のない者は滅ぶ。上に立つ者、公儀が力を失ったがめに人の箍が外れた、致し方ないのだ。この仁とて、立場は変わらぬ」
 他方、為勝は惺窩の表情にひるまずしっかりとした声で応じる。
 その声を聞きながら改めて、
 こちもこちのなせることをなさなければ――。
 久脩はその気持ちを噛みしめた。その心情は、さいなむような調子を帯ながらも熱く、前へと踏み出す力がわいてくるような心地がする。

   五

 夜を燃え上がらせる勢いで銃火が銃口から噴き出た。
 飛翔した銃丸は狙い定めた相手を確実に撃ち抜いた。顔の中心に穴を空けて太刀を手に面に飛び出してきた男が地面に倒れた。
 場所は細川荘の一角、集落でのことだ。もっとも、村の百姓家は火矢で燃え上がりつつあり人の住処は炭へと変わり形を失いつつあった。それらは草調儀のもたらした悲劇だ。後世でいう破壊工作を行うことによって士気の低下、喪失を狙っている。
 炎が闇を紺色に遠ざけるなか、黒々とした村人の影が躍る。逃げまどい、あるいは襲撃者に立ち向かおうと駆けた。
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