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「これ以上、播磨の国人が返り忠をいたさばこの地はやがて毛利の領国となりましょう」
 こちらの言わんとしていることを察したのか、為純の顔に険しい色が浮かんだ。
「それでは、右府殿は後巻きを遣わされるのでおじゃるか」
「おそらく、は」
 尋問の基本のひとつができないことは約束しないことだ。だから、久脩は断言を避ける。人倫にもとる小手先の言動に、自分でも嫌気をおぼえた。走狗という言葉が脳裏に浮かぶ。こちは右府殿の意のままに動いている訳ではない、声に出さずに自分に云い聞かせた。
「おそらく、でおじゃるか」
 冷泉為純の笑みが深くなり、目の皮肉の色が濃くなる。嘘偽りの横行はこの乱世の日常だ、彼の気持ちも理解できないものではない。
「当地は我が家の所領、守護段銭をかけること、人夫の役を課すことなどは禁じられておじゃる」
 何だ、突然の発言に当惑しながら久脩は相槌代わりにうなずいた。
「守護代、公儀に幾度も守るように訴えたおじゃるが、一向に守られる兆しはありはせなんだ」
 この流れは――空手形は信用できない、そういうことかと久脩は顔をしかめたくなる。
「されば」
「別所にはつかぬでおじゃるよ」
 為純の返答に、久脩は一瞬理解が遅れた。
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