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 先頭から最後尾まで半町、各人が六間ほどずつの間を開けて広純たちは移動していた。
 敵が移動した跡を追っているのだ。足跡が途切れたとしても着実に彼らは追跡をつづけている。
 破れた蜘蛛の巣、ひっくり返ったりかき乱された落ち葉、岩の上に残った泥や土、樹木やつる草への傷、そういった物が手掛かりとなるのだ。闇の中でも山の民である広純はそれらを見逃さない。
 そうしているうちに、ふたたび足跡を発見した。念を入れて人数を確認する。
 八人――足跡の深さなどして身につけている鎧の重さはさほどではない。おそらく、足軽などの軽装の者たちなのだろう。
 刹那、“なにか”を感じた。広純は足を止め、後方の手下たちへ手で合図を送る。後続が足を止めるのが確認せずとも気配で分かった。
 怪しいと思ったあさっての方向に対し、目線だけ動かし漠然と眺める。人間の反射的な行動に反し、凝視はかえって対象を見誤ることになるためだ。
 地表の付近を跳ねるものがあった。兎、と広純は正体を見定める。猪であれば危害を加えてくる可能性もあるが、草食の獣となれば放っておいて害はない。なんでもかった、と後方に合図を手で送って歩みを再開する。
 が、それからさほど経たずして広純はふたたび足を止めることになった。景色に違和感をおぼえたのだ。
 先ほどと同じ要領でその正体を見定めようとする。
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