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 まなざしに恐れをにじませる顔はあきらかに真実を口にしている。そもそも、この前に顎を手でなでる動作をおこなっていた、これは熟考を意味し本音を吐こうとしている徴候だ。
「仔細は」「おれは知らねえ。孫一様の一手がこれに当たるという話だ」
 鈴木重秀孫一か――久脩は顔をしかめる。
 雑賀衆でも名の知れた男だ。この地において雑賀衆は神出鬼没、しかも凄腕の放ち手、これはやっかい極まりなかった。
 このあと、久脩は念のために告白の内容に嘘がないか質問をかさねたが当人の言っている通りそれ以上のことを知っているようすはなかった。
 この証言をもとに、久脩は改めて他の“臭い”連中に尋問をおこなった。
 だが、たいして成果は出ない。
 そのことに疲れてそろそろ一休みしよう、そう考え空が白み始めたころ、本堂に人影が滑り込んできた。状況が状況だけに心の臓がすくんだ。ちょうど、尋問相手もいないために次郎太は厠へと立っていた。
「調子はどうだ」
 が、放たれたのは刃でも矢でもなく言葉だ。
 よく見れば相手は広純だった。忍び装束ではないが、黒い肌が余計に闇に姿を溶けさせている。
「上首尾、なのか」
 答える久脩の顔色は冴えない。疲労と重圧のせいだ。
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