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 事実、天文元年近江の六角定頼勢が京都の日蓮宗徒と協力し山科本願寺を攻撃、本願寺側も応戦した山科本願寺合戦があり、天文五年叡山僧兵と六角近江衆を中心とする軍勢が洛中に乱入、京都法華宗に十一本山を焼き討ちした天文法華の乱があった。むろん、一向一揆の動きも忘れてはいけない。これらをとり除かないことには、乱世の終わりは見えないのだ。
 他方で、
 公家のなんと情けないこと――。
 その思いを広純は抱いていた。
 無縁の者として、通行の自由、税や緒役の免除、私的隷属からの解放という特権を天皇から受けた身として、公家の下知にはしたがう。したが、過去の権威をふりまわして生計(たつき)を得ている奴輩のなんとなさけないこと――。
 だが、そうでない者がいることを久脩と出会ったことで知った。思い込みに囚われれば誤ることになる、そんな考えに至った。
 だから、広純にしてみれば有脩と組んで働けるということはうれしいことだ。

      ● ● ●

 広純との再会の翌日、久脩は安土城の一角に呼びされていた。ただし、対面しているのは信長ではなくその側近の生駒近清だ。信長朱印状の取次や、奉書の発給にかかわっている。
 昨日、卜占をしたばかり、ということは――久脩は不安を感じていた。戦への識神の利用を求められるのか、と。
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