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 一刻も経ったことだろうか、次第に彼らは劣性に置かれることになる。人間楯の野武士たちがことごとく倒れた。さらに、連弩の矢も、鉄砲の弾も尽きたのだ。あとは久脩たちだけの力で、それも白兵戦で敵に向かわねばならない。
「槍柵をなせ、弩、鉄砲の放ち手も槍交ぜに加わり、味方に合力しろ」
 久脩は必死に叫んだ。
 だが、気づけば多くの突破が既に倒れている。
 それでも生き残った者が槍衾を形作った。押し寄せる識神を撃退しながら、じょじょに後退していく。馬に乗った者は、遠くに行って勢いをつけて突撃を敵にかけてはそれを支援した。しかし、敗色が黒煙のごとく濃く漂い始めていた。
 この策であれば、と存念したが――久脩は疲労以上に心に急激に溜まった澱が体を重くするのを感じる。
 それでもなんとか、突破たちの槍衾の側へと加わりくり出される攻撃を撥ね退け返す太刀で斬った。
 一歩、二歩と後退するたびに、ひとり、ふたりと手勢が脱落していく。そうして犠牲を出しながら、高さを稼ぐことで低い場所に敵を立たせて多少の有利を作る。
 しかし、それではまったく、全然、みじんも足りない。
 新たに加わった突破たちを頭数に加えても、仲間が半数以下になっている。敵も三分の一程度の数を減らしているが、これでは近いうちにこちらが撃滅されることは目に見えていた。
 駄目か、と采配をふるう者が決して抱いてはいけない思いを久脩が意識したことろで、突如として背後から足音が聞こえる。新手っ――ついに久脩の心は挫けそうになった。
 とたん、視界に映ったのは忍び装束の集団だ。
 彼らは上段を斜めに傾がせたような独特の構えで、猿の雄叫びのごときものを発しながら突貫してくる。ひとつ、ふたつ、数をかぞえるうちに間合いが詰まった。
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