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 久脩は自然と、座の中央に座主近衛前久へと視線を移した。この場につどう者は彼の名のもとに招集されている。ただ久脩が特異なのは、父の妻女の妹が前久に嫁いでおり姻戚関係にあることだ。
「よう、お出でなされた」
 とたん、みなを見渡し前久は満足そうに口を開いた。
「こたび、つどうてもらったのは他でもない、貴殿らに“平安雲居”に一味してもらいたいがためだ」
「平安雲居とはなんのことでございましょうや」
 前久に座のひとりから疑問の声が飛ぶ。
 ただ、冷静に周囲を観察すると多くの者は事前に説明がなされているのか、奇異の念を面(おもて)に刷いているほうが少数派だった。
 前久は鷹揚な仕草でひとつうなずく。
「知っての通り、雲居とは御所のことなり」
 持ってまわった彼の物言いに、久脩はすこしいらだちをおぼえた。この面子という要素からただよう不穏な気配が神経をとがらせている。
「源平の乱からこっち、内裏は見るも悲惨なほどに力を失った」
 前久の言葉に、面子の多くから嘆息がもれる。ここで意地を張れる気概すら、公家たちからは失われていた。
「それがこのつどいと、なんのかかわりがおじゃる?」
 公家のひとりが不快げに問いかける。
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