直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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   三

「ほら、手をつかめ」
 金角と銀角を落とし穴から引っぱりあげ、例の僧侶は彼らをともなって三蔵たちのもとに近づいてきた。
「なにゆえ、なすがままになっている?」
 僧侶は柔和な顔にいぶかしげな色を刷く。
「……だって、あいつらの方が多勢だし、身体だって頭格(かしら)の奴の方が大きいし」
 三蔵が弱気な声で応じた。
「悔しくはないのか?」
 間髪いれずに僧侶は聞く。
 ……――ッ、カッと三蔵の腹の底が熱くなった。
(お前になにがわかる!?)
 屈辱と苦痛に耐える日々を送るしかない身の上の辛さ、それも知らない赤の他人にどうのこうのといわれることに憤激する。
「――悔しいに決まってるだろう!」
 三蔵は対手を刺すような眼でにらみつけた。
 気迫は充分だな、ぽつりと僧侶はつぶやく。
「余の者たちも気持ちは同じか?」
「当たり前だ!」
 僧侶の問いかけに、砂地に転がった姿勢から悟空が威勢よくこたえた。
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