直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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「さよう。それがしは、兵法(ひょうほう)だけでなく『孫子』『六韜(りくとう)』『三略(さんりゃく)』などから兵法(へいほう)も学んでおりまする」
 自信ありげなこちらの態度に、賢兼も、ふむ、と思案げな顔をした。
「よかろう。おぬしの云う通りにいたすとしよう」
 分別も久しければ腐(ねま)る――賢兼は即決する。
「『武士道とは死に狂い也(なり)』、お忘れですか殿!」
「『必死は殺され、必生は虜にさる』――孫子の兵法の言葉にございまする、保知殿」
 激した保知の訴えにかぶせるように、三蔵はその言葉を口にした。
 その意味は、「かけ引きを知らずに必死に戦う者は殺され、生きることばかりを考える者は捕虜にされる」というものだ。
「保知、若い者に功を譲っておけ」
 そこに賢兼が快活な笑みで告げる。――保知が間違っているのではなく、あくまで“譲った”ということにすることで彼が折れやすいように配慮した言葉だ。
 ――そうしている間にも敵は動いている。
 弓を持った卒が矢を浴びせてくる。
 これに対し、賢兼方は鉄炮で応じた。射程、威力ともに火縄銃は弓を圧倒する。装填の時間は、一発分の火薬と弾丸がそれぞれに入れられた玉込めを早くする道具、早盒(やはごう)を使用し、さらに弓がそれを掩護(えんご)していた。
 隘路を少ししか進まぬうちに、敵は銃丸に打ち倒され、矢を受けて骸となって転がる……
 が、それでも銃撃の間隙を突いて、二騎の騎馬武者が隘路を駆け下りてくる。銃撃は間に合わず、矢は対手が動いている物体のためにうまく刺さらない――
(俺の出番だな)
 すっ、とそこで三蔵が動きをみせた。
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