直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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「鳥目(ちょうもく)をいただけますかな?」
 僧侶の催促に、紅孩児がぎこちない動きで応じる。
 鳥目を受け取った対手は、
「どうも。あなた方に御武運があらんことを――」
 と云い残してまた、
「己の運命を知りたくはないか~、己の行く末を知りたくはないか~、八卦見はいらんか~」
 と声を張り上げ、飄々とした様子でこちらに背を向け歩いていった――

   二

 龍造寺の戦というのは圧倒的だった――
 約二〇人からなる足軽鉄砲隊、それが五〇組、計一〇〇〇名。彼らはそれぞれの隊を率いる侍大将の指揮のもとに、元と先の目当て(現在の照門照星)を合わせて一斉に引鉄を静かに落とす。
 ――無数の雷鳴に似た音が鳴り響いた。
 とたん、銃丸(じゅうがん)が敵の戦列を粉微塵に打ち砕く。
 手足が千切れ飛び、首が薄皮一枚で身体でつながっている状態になり、血と臓物が地面にぶちまけられた……
 生き残った軍兵も烏合の衆と化して浮き足立ち、そのなかでも臆病な者は背を向けて逃げ出す。
 そこに、鉄砲隊の間に配置された足軽弓隊の放つ矢が、風を裂いて驟雨となって降りそそいだ。
 そして、足軽槍隊、徒歩組(槍部隊)が喚声をあげながら突撃し、総崩れとなった敵の軍兵を殺戮する。
 雑草を刈りとるようにあっけなく敵の命が奪われていった――平士(騎馬隊)の出番さえない。
 三蔵たちは全軍のなかでも、先鋒として常に先頭に立って戦った。
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