直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

牛馬走

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「なあ、なんか妙な雰囲気だけどよ~、なにがどうなってんだ?」
「ん、俺たち、『御前試合』ってやつに臨むことになるみたいだよ!」
 そんな三蔵と円久尼のやり取りの陰で、なさけない顔の悟空の問いに紅孩児が昂奮した声でこたえる。
「なに、御前試合!? 間違いねーのか、それ?」
 ささやき声を通り越し大声をあげる悟空を、三蔵が怒りを込めた眼差しを向けて黙らせた。
 す、すまん……――眼顔で彼が謝るのを認め、あらためて三蔵は円久尼に視線を向け、
「われらはいついかなるときでも受けて立つ所存でございます」
 と告げた。
「うむ、相分かった」
 円久尼は、悟空と三蔵のやり取りを見ていてやや苦笑に近い表情を浮かべてうなずく。
 その反応を目の当たりにし、羞恥で三蔵は顔を熱くした――……

   二

 主人の前での御前試合はなんと、翌日ということになった。だが、この日夕餉を終えた三蔵たちの様子は暢気なものだ。
 割りふられている棟割長屋の中央に位置する金角、銀角の狭苦しい部屋に集まり、各々くつろいでいる。
 ……第三者がその光景を目の当たりにしたなら、一騎当千の兵(つわもの)だというのに草食動物が猛獣を恐れて身を寄せ合っているような奇妙な印象をいだいたはずだ。
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