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フェレイロには天賦の才があることが明らかになる。邸を駆け回っては後妻に暴力を振るわれるため判っていなかったが、異常な身体能力を持つことが明らかになった。
瞬く間に、大の大人でさえ彼に敵う者はいなくなる。
表情には出さなかったが、もしそれが表にあらわれたなら、彼の口もとが三日月のような曲線を描いているのを家の人間は目にしたことだろう。
十四の齢を数える頃、フェレイロはその剣の才を持って家族を惨殺した。
父親の男根を切り取って無理やり喰らわせ、母親の陰部を剣で突き刺し、母に吹き込まれ血の繋がらない兄を常日頃から虐げていた弟を少し疵を作ってじっくりと時間をかけて殺した。全員の血を先祖伝来と父が自慢していた銀の盃でもって受け止め飲んだ。勝利の美酒はどんな熟成した酒さえ敵わない美味さを備えていた。
――それから、フェレイロは家を出る。そして、剣の腕一本で生きてきた。
フェレイロの心を浮き立たせてくれるのは、吸血行為と戦いだけだ。女の柔肌を抱いても、欠片も心は満たされない。
一方的な戦闘も、興醒めするだけだ――。
六
払暁の空、平戸の方角から空に向かって灰色の筋が伸びている。町の一角で火の手が上がり、その名残が夜が明けようとしている今でも残っているのだ。
それを、蔵人は寂寥感と決然とした思いがない混ぜになった眼差しを向けていた。
おどんは、負けることはでけん――胸の裡で勃然と呟く。
……蔵人の心には変化が訪れていた。
かつて、もう大事なものを失いたくないと強くなろうととした。だが、天草伊豆守の元で強くなった頃には、一族から反逆者が出たせいで丸目退治が起こり、守るべき者の大半が人吉の地から消えていた。
瞬く間に、大の大人でさえ彼に敵う者はいなくなる。
表情には出さなかったが、もしそれが表にあらわれたなら、彼の口もとが三日月のような曲線を描いているのを家の人間は目にしたことだろう。
十四の齢を数える頃、フェレイロはその剣の才を持って家族を惨殺した。
父親の男根を切り取って無理やり喰らわせ、母親の陰部を剣で突き刺し、母に吹き込まれ血の繋がらない兄を常日頃から虐げていた弟を少し疵を作ってじっくりと時間をかけて殺した。全員の血を先祖伝来と父が自慢していた銀の盃でもって受け止め飲んだ。勝利の美酒はどんな熟成した酒さえ敵わない美味さを備えていた。
――それから、フェレイロは家を出る。そして、剣の腕一本で生きてきた。
フェレイロの心を浮き立たせてくれるのは、吸血行為と戦いだけだ。女の柔肌を抱いても、欠片も心は満たされない。
一方的な戦闘も、興醒めするだけだ――。
六
払暁の空、平戸の方角から空に向かって灰色の筋が伸びている。町の一角で火の手が上がり、その名残が夜が明けようとしている今でも残っているのだ。
それを、蔵人は寂寥感と決然とした思いがない混ぜになった眼差しを向けていた。
おどんは、負けることはでけん――胸の裡で勃然と呟く。
……蔵人の心には変化が訪れていた。
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