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「拙者が教えた套路(とうろ)を続ければ、一人でも強くなることができよう。毎日、怠らずに続けることが肝要だ」
 頼慶は悲しみを堪える表情で、力づけるように言った。
 一心はもう一度蔵人に辞儀をし、「それでは」と告げて去って行く。
 その背中に眼を向けながら、「千里、いるのなら出て来い」と蔵人は低い声を出した。
「何だ?」と大店の陰なら女透波が姿を現す。
「坊が一人で夜道を帰るのが心配だ。帰り着くのを見届けてやってくれ」
 蔵人は悲哀の色が浮かぶ瞳をしながら千里に頼んだ。
「……承知した」
 千里はやや間を置いた後に受諾し、闇に溶けて消える。その気配が遠ざかっていくのを、蔵人は感じた――。
(できることなら、ずっと武器の取引ばせんでほしか……)
 蔵人は祈るように、声に出さずに呟く。

 だが、その蔵人の願いが届くことはなかった。

   四

 人々が寝静まる頃、浜に幾つもの人影が佇んでいる。それらは、二つの集団に分けることができた。
 一方は、腰に大小を差して侍の装をした者たちで、その数は四人。その中には、切支丹の教えを学ぶために南蛮人に会っていると蔵人に告げた男の姿もあった。
 そして、残りの輩は南蛮人だ。先頭にいるのは、貴族的な風貌の船武長フェレイロだ。その周りには、同じく船員たちの姿がある。七尺(約二百十)に及ぶ背丈と、岩を幾つも集めて肉体を持つ巨人の如き双子、六尺(百八十)の身長に樽のような肥満した体を備えた男とが特に異彩を放っている。他の者にしても、力自慢、腕自慢の男たちが揃っていた。こちらの全体の数は十数人。
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