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夕刻、蔵人たちは店で夕餉を摂りながらも、各々が仕入れた話を披露し合っていた。
「――辻斬りに遭った者の様相は大別すると、三つに分かれるようだ」
文五郎が、聞き込んできた情報を明かす。
「一つは、今日我らが眼にした全身に痣がある骸。そして、もう一つは普通の刀疵(かたなきず)を負った者。さらに、最後は刺し傷が死の要因となっている者もあるということだ」
ここで文五郎は一呼吸置いた。
「痣と刀の被害に遭った者は、ほぼすべてが侍だということだ。そして、刺し傷で死んだ者は、例外なく女性(にょしょう)らしい」
女性らしいと口にするとき、文五郎は眼に痛ましげな色を浮かべる。
それを聞いた蔵人と頼慶も表情を曇らせた。
「前二つの死に方で、『ほぼすべて』といったということはそれ以外の死に方もあるということだな?」
唯一表情を変えなかった千里が口を開く。
冷たか女たい――蔵人は、そんな思いを抱いた。
「一人、商人が斬られて死んでいる。透波らしき装束の骸と共に見つけられたらしい」
と応え、文五郎は千里に問いかけるような視線を向ける。
「……恐らく、殺(や)られた仲間の骸だろう」
千里の返答はやや遅れた。この氷の女性でも、仲間の死には心が動くようだ。
「状況からして、下手人を見たために殺されたらしいということだが――」
「そうだ。偶然姿を現したところを斬られた」
文五郎の問いかける口ぶりに対し、千里は淡々と答える。
夕刻、蔵人たちは店で夕餉を摂りながらも、各々が仕入れた話を披露し合っていた。
「――辻斬りに遭った者の様相は大別すると、三つに分かれるようだ」
文五郎が、聞き込んできた情報を明かす。
「一つは、今日我らが眼にした全身に痣がある骸。そして、もう一つは普通の刀疵(かたなきず)を負った者。さらに、最後は刺し傷が死の要因となっている者もあるということだ」
ここで文五郎は一呼吸置いた。
「痣と刀の被害に遭った者は、ほぼすべてが侍だということだ。そして、刺し傷で死んだ者は、例外なく女性(にょしょう)らしい」
女性らしいと口にするとき、文五郎は眼に痛ましげな色を浮かべる。
それを聞いた蔵人と頼慶も表情を曇らせた。
「前二つの死に方で、『ほぼすべて』といったということはそれ以外の死に方もあるということだな?」
唯一表情を変えなかった千里が口を開く。
冷たか女たい――蔵人は、そんな思いを抱いた。
「一人、商人が斬られて死んでいる。透波らしき装束の骸と共に見つけられたらしい」
と応え、文五郎は千里に問いかけるような視線を向ける。
「……恐らく、殺(や)られた仲間の骸だろう」
千里の返答はやや遅れた。この氷の女性でも、仲間の死には心が動くようだ。
「状況からして、下手人を見たために殺されたらしいということだが――」
「そうだ。偶然姿を現したところを斬られた」
文五郎の問いかける口ぶりに対し、千里は淡々と答える。
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