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おお、ほんなこつ、来たたいね――蔵人は浜辺の松林に身を隠しながらも、口もとをにやりとさせる。側には千里の姿もあり、共に同じ方角へと視線を注いでいた。
二つの眼差しの先、半町(約五十四メートル)離れた場所、波打ち際に立つ一人の町人態、壮年の男の姿がある。明らかに何かを待っている様子だ。漁師の言っていた通りの場所に佇んでいる。
よし、と蔵人は千里と目線を交わし無言で頷いた。
そして、松林を廻って海岸に続く道の方に出て、件の者へと近づいていく。あくまでも自然な足取りで、決してこちらが相手に対し警戒の念を抱いていることを悟らせない。
「ちょっと、いいかい」
と蔵人から声をかけた。
相手を刺激しないために、自然と大刀の間合いである三間(五・四メートル)の距離より遠い場所に立つ。
「なんだ?」相手はぞんざいな口調で聞き返した。
「いやね、あんたが南蛮の人と付き合いがあると聞いてね、話を聞きたいと思って声をかけさせてもらったんだよ」
蔵人は、相手の容姿の仔細を検める。長身の蔵人よりもさらに上背があるが、一方でやや細身、鋭い顔つきの壮年の男だ。間違いない、十中八九漁師のいっていた者だろう。
「――何故、話を聞きたがる?」
尋ねる男の目つきが尖った。
おお、ほんなこつ、来たたいね――蔵人は浜辺の松林に身を隠しながらも、口もとをにやりとさせる。側には千里の姿もあり、共に同じ方角へと視線を注いでいた。
二つの眼差しの先、半町(約五十四メートル)離れた場所、波打ち際に立つ一人の町人態、壮年の男の姿がある。明らかに何かを待っている様子だ。漁師の言っていた通りの場所に佇んでいる。
よし、と蔵人は千里と目線を交わし無言で頷いた。
そして、松林を廻って海岸に続く道の方に出て、件の者へと近づいていく。あくまでも自然な足取りで、決してこちらが相手に対し警戒の念を抱いていることを悟らせない。
「ちょっと、いいかい」
と蔵人から声をかけた。
相手を刺激しないために、自然と大刀の間合いである三間(五・四メートル)の距離より遠い場所に立つ。
「なんだ?」相手はぞんざいな口調で聞き返した。
「いやね、あんたが南蛮の人と付き合いがあると聞いてね、話を聞きたいと思って声をかけさせてもらったんだよ」
蔵人は、相手の容姿の仔細を検める。長身の蔵人よりもさらに上背があるが、一方でやや細身、鋭い顔つきの壮年の男だ。間違いない、十中八九漁師のいっていた者だろう。
「――何故、話を聞きたがる?」
尋ねる男の目つきが尖った。
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