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111・了

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 栄助が畦道のちょっとした斜面に伏せている。此度の依頼は邪魔者だった名主を殺したやくざの親分を仕物にかけることだった、家族からの依頼だ。栄助が陣借り無宿になってからは、こういった義にのっとった依頼をなるべく受けるようにしていた。
 彼の視線の先、大きな百姓家から複数の影が飛び出してきた。
 頬に十文字傷の男、と――仲間が惹きつけてきているであろう、敵の中で腕利きの相手の目印を栄助は心の中でくり返した。
 筒先をくだんの相手に向けて引金を絞る。轟音がとどろいた。
「よし」とつぶやく。
 狙い通りに相手は銃丸を胸に受けて倒れた。
 栄助の鉄砲の腕は相変わらず大変なものだ。仲間を援護するため、手早く早合を使う。彼が死ぬまで陣借り、彼の乱世は終わらない。
                                       了
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