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    終章

 あのあと、栄助は陣借り無宿の仲間との待ち合わせ場所に向かった。
 だが、宿場の旅籠には誰一人としてやって来なかったのだ。
 しばらく途方に暮れた。村を離れることになった彼らが全員いなくなるなど考えたことがなかった。
 向後の選択肢は多くない。故郷に帰るか、江戸に向かう、渡世人として暮らすか。
 しかし、故郷に帰ることは栄助のなかではありえなかった。
 人殺しの自分が妹の側にいる訳にはいかない。
 となると、残るは江戸に出るか渡世人をつづけるか。
 けれども、妹の近くに居られないのと同じ理由で江戸で暮らすのは躊躇われた。周囲を欺きながら何気ない顔で平穏な暮らしを享受する、というのは許されない気がするのだ。
 それに、
 俺には鉄砲しかない――。
 という思いがあった。
 そこで、
「おまえさえん、陣借り無宿に興味はないかい?」
 と腕の立ちそうな浪人に声をかける。
 ほかにも強そうな人間にはどんどん近づいて行った。
 他方で仕事も引き受けた。賭場で自分が陣借り無宿の生き残りだと吹聴しているうちに、向こうのほうから声をかけてきた。
 やくざなど縄張りのことで始終揉めているようなもので、鉄砲の腕が入用な場所はあちこちにある。
 そうやって栄助は幾人か銃丸で仕留めた。そうしているうちに、
「仲間に入れてくれないか」
「それがしの腕、高く買ってくれるなら売ろう」
 などという人間が現れた。
 ひとり、ふたり、三人、四人と元と同じ頭数にまで増えた。
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