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 結果、いっさい勘付く余裕はなく銃撃を受けた。
 体に衝撃を受けた直後に脱力し、その場にうつ伏せに倒れていた。
 どこから――撃たれたんだ、と思うものの体が急激に冷たくなっており、もはや意思に従って体は動かない。
 ただ、倒れる寸前の伊平治と目が合った。最後に仲間と視線を交わすことができる、ひとりではない、というそれだけの思いで口角が自然と持ち上がった。

 猪助もまた、村からさほど離れていない場所で敵に遭遇した。片腕を負傷したせいで遠くまで逃げる気力がわかなかったのだ。
 敵は二人の公儀隠密だった。
 いや、それだけではない。村の住民も一緒だった。その理由は彼らの口から明らかにされた。
「おまえたちを始末すれば村はお咎めなしなんだ」
「公方さまの御慈悲だ」
 そんな簡単な話ではない、おおかた公儀隠密に騙されているのだろうが、村民は彼らの手足となって襲いかかってきた。
 彼らが投げる石は馬鹿にできない威力がある。
 手足にひどい打ち身、もしかすると骨折を猪助は負わされることになった。
 頭にも一撃を受け血が流れて視界を遮る。
 そうなると、ますます石を避けられなくなった。
 ああ、そろそろ終いなんだな――その事実が実感された。
 だが、後悔はない。退屈な村の暮らしを捨てて飛び出し、陣借り無宿などという無茶な稼業で生きてきた。
 いつ死ぬかもしれず、それでもいいと思っていた。
 むしろ、思った以上に生きてしまったのが現実だ。
 特に、今となっては最期のときを共に過ごしてきた仲間とは家族の情のようなものを通わせることすらできた。
 せめて最後は――派手に散るか、そう猪助は考える。
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