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 許せないが、自分の生まれた大名家が存亡の危機にあると聞くとそれはそれで放っておけない思いがする。
「小次郎、おまえさんはどう思うんだ?」
 猪助が気づかわしげな声でたずねた。
「それがしは」
 小次郎は答えかねる。助けたいとも、助けたくないとも思うのだ。
「親分に任せる」
 とっさに出てきたのはそんなせりふだった。
「じゃあ、この話に乗るという奴は手をあげろ。公儀隠密が相手となりゃあ、一筋縄じゃあいかねえぞ」
 猪助がみなを見まわした。
 それから少しの間ののち、不揃いにではあるが仲間全員の手があがった。
「小次郎の事情があっても、おれたちにとっちゃ仕事のひとつだ」
 助左衛門の言葉にみながうなずく。
「かたじけのうござある」
 横目付がふたたび頭をさげるのを、
「勘違いするな。いくら金子を寄越すかかですべては決まる」
 猪助が威嚇するような口ぶりで否定した。
 一人百両の報酬がそれで約束され、前金で二十両が支払われる。
 それでとにもかくにも、仕事を引き受けることが決定した。
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