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「して、依頼とは?」
「我ら家中の支障となる者どもを始末してほしい」
 伊平治の問いかけに横目付が声を低くした。
 その言葉の内容に小次郎は怒りがこみ上げるのを感じる。自分を家中から追いやったように、またふたたび誰かを陥れようとしているのか。
「さにあらず、友之助様」
 横目付が手をあげて左右にふる。実は、と彼は迷いのある口調で言葉をかさねた。
「水争いで御料地の民を当家の領民が殺めたのでござる。このこと、いまだ公にはなっておらねども、柳営が隠密を差し向けるとの風聞が聞こえて参った次第で。このままでは最悪、当家が御公儀に弓引いたとも判じられかねませぬ」
「隠密を始末して、領民の殺しをなかったことにするってか」
 助左衛門が横目付の話の流れに憤った。
「憐れなのは、公儀、大名家に翻弄される民だ」
 栄助は同情のこもった声をもらす。
「仔細をつまびらかにしたのはぜひにも友之助様に助けていただきたい一心にござる。どうか、この通り」
 横目付が頭を深々とさげた。断れば土下座しそうな勢いだ。
 おのれを逐電に追い込んだ家中は未だに許せない。
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