陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「確かに斬り合いの醍醐味はござるな」
 小次郎が昏い笑みを浮かべて伊平治に同意する。
「それで返り討ちに遭ってたら世話ねえだろ? 身につけて損な技能じゃねえんだ、とにかく修練を受けてもらうからな」
「わかったよ、親分」
「承知した」
 猪助の強引な物言いに、伊平治と小次郎が承諾の言葉を口にする。

 藪の中に仲間にひそむように言ってその場を離れてもどってきた。
 伊平治は元忍びだけあってこちらが指南する必要のない隠形ができていた。だが、残りの三人はやはり欠点があった。
 猪助は藪に深く身をひそめようとする余り植物を潰したり折ったりしていた。
 小次郎は前記の事態を避けようとするあまりか藪にもぐりきれていない。
 助左衛門はふたりより上手にもぐっているものの、体の線を植物の線に溶け込ませる試みがまだ甘い。
 三人に向けて立てつづけに小石を投げた。すると思った通り、彼らは身じろぎをする。
「相手に見つかって攻撃されるでもない限り、身動きをしない」
 栄助は偉そうな口調で告げた。
「それじゃあ、立って」
 指示にしたがいみなが立ち上がる。
「小石を投げるのは攻撃ととらえていいだろうが」
 助左衛門がさっそく噛みついてくる。
「まあまあ、師の教えには大人しく従いな」
「栄助のもうすことをは正しいでござるしな」
 猪助、伊平治が彼の言葉に反論した。
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