111 / 137
85
しおりを挟む
「確かに斬り合いの醍醐味はござるな」
小次郎が昏い笑みを浮かべて伊平治に同意する。
「それで返り討ちに遭ってたら世話ねえだろ? 身につけて損な技能じゃねえんだ、とにかく修練を受けてもらうからな」
「わかったよ、親分」
「承知した」
猪助の強引な物言いに、伊平治と小次郎が承諾の言葉を口にする。
藪の中に仲間にひそむように言ってその場を離れてもどってきた。
伊平治は元忍びだけあってこちらが指南する必要のない隠形ができていた。だが、残りの三人はやはり欠点があった。
猪助は藪に深く身をひそめようとする余り植物を潰したり折ったりしていた。
小次郎は前記の事態を避けようとするあまりか藪にもぐりきれていない。
助左衛門はふたりより上手にもぐっているものの、体の線を植物の線に溶け込ませる試みがまだ甘い。
三人に向けて立てつづけに小石を投げた。すると思った通り、彼らは身じろぎをする。
「相手に見つかって攻撃されるでもない限り、身動きをしない」
栄助は偉そうな口調で告げた。
「それじゃあ、立って」
指示にしたがいみなが立ち上がる。
「小石を投げるのは攻撃ととらえていいだろうが」
助左衛門がさっそく噛みついてくる。
「まあまあ、師の教えには大人しく従いな」
「栄助のもうすことをは正しいでござるしな」
猪助、伊平治が彼の言葉に反論した。
小次郎が昏い笑みを浮かべて伊平治に同意する。
「それで返り討ちに遭ってたら世話ねえだろ? 身につけて損な技能じゃねえんだ、とにかく修練を受けてもらうからな」
「わかったよ、親分」
「承知した」
猪助の強引な物言いに、伊平治と小次郎が承諾の言葉を口にする。
藪の中に仲間にひそむように言ってその場を離れてもどってきた。
伊平治は元忍びだけあってこちらが指南する必要のない隠形ができていた。だが、残りの三人はやはり欠点があった。
猪助は藪に深く身をひそめようとする余り植物を潰したり折ったりしていた。
小次郎は前記の事態を避けようとするあまりか藪にもぐりきれていない。
助左衛門はふたりより上手にもぐっているものの、体の線を植物の線に溶け込ませる試みがまだ甘い。
三人に向けて立てつづけに小石を投げた。すると思った通り、彼らは身じろぎをする。
「相手に見つかって攻撃されるでもない限り、身動きをしない」
栄助は偉そうな口調で告げた。
「それじゃあ、立って」
指示にしたがいみなが立ち上がる。
「小石を投げるのは攻撃ととらえていいだろうが」
助左衛門がさっそく噛みついてくる。
「まあまあ、師の教えには大人しく従いな」
「栄助のもうすことをは正しいでござるしな」
猪助、伊平治が彼の言葉に反論した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

渡世人飛脚旅(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
牛馬走
歴史・時代
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)水呑百姓の平太は、体の不自由な祖母を養いながら、未来に希望を持てずに生きていた。平太は、賭場で無宿(浪人)を鮮やかに斃す。その折、親分に渡世人飛脚に誘われる。渡世人飛脚とは、あちこちを歩き回る渡世人を利用した闇の運送業のことを云う――
日日晴朗 ―異性装娘お助け日記―
優木悠
歴史・時代
―男装の助け人、江戸を駈ける!―
栗栖小源太が女であることを隠し、兄の消息を追って江戸に出てきたのは慶安二年の暮れのこと。
それから三カ月、助っ人稼業で糊口をしのぎながら兄をさがす小源太であったが、やがて由井正雪一党の陰謀に巻き込まれてゆく。
月の後半のみ、毎日10時頃更新しています。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)
牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)暦道を司る賀茂の裔として生まれ、暦を独自に研究していた勘解由小路在昌(かげゆこうじあきまさ)。彼は現在(いま)の暦に対し不満を抱き、新たな知識を求めて耶蘇教へ入信するなどしていた。だが、些細なことから法華宗門と諍いを起こし、京を出奔しなければならなくなる。この折、知己となっていた織田信長、彼に仕える透波に助けられた。その後、耶蘇教が根を張る豊後へと向かう――

忍び働き口入れ(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)
牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)藩の忍びだった小平治と仲間たち、彼らは江戸の裏長屋に住まう身となっていた。藩が改易にあい、食い扶持を求めて江戸に出たのだ。
が、それまで忍びとして生きていた者がそうそう次の仕事など見つけられるはずもない。
そんな小平治は、大店の主とひょんなことから懇意になり、藩の忍び一同で雇われて仕事をこなす忍びの口入れ屋を稼業とすることになる――

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

忍者同心 服部文蔵
大澤伝兵衛
歴史・時代
八代将軍徳川吉宗の時代、服部文蔵という武士がいた。
服部という名ではあるが有名な服部半蔵の血筋とは一切関係が無く、本人も忍者ではない。だが、とある事件での活躍で有名になり、江戸中から忍者と話題になり、評判を聞きつけた町奉行から同心として採用される事になる。
忍者同心の誕生である。
だが、忍者ではない文蔵が忍者と呼ばれる事を、伊賀、甲賀忍者の末裔たちが面白く思わず、事あるごとに文蔵に喧嘩を仕掛けて来る事に。
それに、江戸を騒がす数々の事件が起き、どうやら文蔵の過去と関りが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる