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 その頃には栄助は早合で次弾の装填を済ませている。
 やくざ者のひとりが助左衛門たちの動向に気づいて近づく様子を見せた。
 発砲、その頭を撃ち抜く。それでやくざ者たちは怖気づいた。もう、誰も何も言わず助左衛門たちが銭を持って行くのを見送ったのだ。
 手に入れた金は細かいものは邪魔なため宿場で両替して金に変えた。

 それから約一日、現場の村からはなれた宿場に栄助たちはいる。
 何気なしに栄助は口を開いた。
「それじゃあ、俺が剣術の稽古を受けてるみたいに鉄砲の稽古をするっていうのはどうだい?」
「ほう、それは」
 伊平治がほおをゆるめる。昨日、賭場で儲けてきたのもあって彼は上機嫌だった。
「したが、剣術のように稽古すればそれなりに上達するものなのか?」
「それは俺が保障するよ。撃てば撃つほど、鉄砲の腕前は上達する」
 疑わしげな小次郎に栄助は自信を持ってこたえた。
「それじゃあ一丁やってみるか」
 猪助の親分が承知したことで鉄砲の稽古を行うことが決定する。
「それじゃあ、具体的にはどうする?」
「単に鉄砲を撃つだけじゃなく、身の隠し方、足跡の見つけ方、その他のことを教えたいから山にこもりたいと思う」
 猪助の問いに栄助は仲間に合わせた修練を考案しながら告げた。
「うへえ、この年になって山に入るのか」
 助左衛門がたまらないとばかりに声をあげる。
「鉄砲で遠間から仕掛けられりゃ死ぬ公算も低くなるんだ、気張れ」
「まあ、親分の言う通りで。ただ、あっしは近間で斬り合うあのひりひりした感触も嫌いじゃねえんですが」
 猪助の言葉に伊平治が笑顔で際どいせりふを返した。
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