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 そうか、だからか――と栄助は思った。他に生き方を知らないというのもあるだろうが、やくざ者になる者の一部には、こういう快感じみたものを感じるために渡世人になるのだと思った。
 その後、栄助たちは宿場で旅籠に泊まった。風邪気味だった栄助は賭場にも女を買いにも行かず部屋でじっと横になっていた。
 そこに風を巻いて男たちが飛び込んでくる。
「親分の仇を討たせてもらうぞ」
 という低い声に相手の正体が分かった。
 だが、栄助の理解は追いつかない。呆然となって四人の男たちを見つめる。
「覚悟しやがれ」
 長脇差が抜き放たれ切っ先がこちらに向けられた。
 まずい――この段になってやっと栄助は焦慮に駆られる。
 刹那、胴が抜かれた。斬りつけたのは男たちのひとりで仲間に向かって斬撃を浴びせたのだ。
 閃、閃と立てつづけに長脇差をふるい男は首を薙ぎ、太腿の太い血の管を裂いた。
 これは――栄助は倒れる男たちを無言で見守る。
「それがしは元は小姓で現在、家中で隠密を担っている者にござる」
 血ぶりした男が話しかけてきた。はあ、と曖昧な声を返すと、
「友之助をお守りできなかった儀、こたびの助太刀にして果たしたと存ずる」
 と男はどこか晴れやかな表情で告げた。
 なるほど、と栄助はうなずいた。かつての無念をこの場で晴らしたというのだ、この男は。ならば顔つきの理由にも納得がいく。だが、
「友之助とは?」
「貴殿らが小次郎と称しておる御仁でござる」
 実は、と男は言葉をかさねた。
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