陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

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「刃物は、よりいっそう命を奪ってるって感じがしやがるだろ？」
「けど、今回の戦いは覚悟を決めて仲間に戻ったせいか、特に何も感じなかった」
「そりゃあ、頼りにさせてもらうぜ栄助」
　二人の会話に猪助が笑顔で割り込む。
「あっしは外道だからな、最初で刃物で人を殺めたときは“こんなもんか”って拍子抜けした口だ」
　猪助は白い歯を見せて言葉をかさねた。
「小次郎、お前はどうだった？」
「吐いて、吐いて、吐いて、大変でござった」
　猪助に強いて尋ねられ、小太郎は仕方なしといった調子で返答する。
「手前ももどしかけた」
　伊平治が手拭いで神経質に汗をぬぐいながら告げた。
　小休止なしの行動でみな神経が昂ぶっている。

● ●　●

　刺客を返り討ちにしてから二日が経っていた。
　栄助は百姓家の屋根の上に伏せて一番高くなる場所から覗いている。
　そうしていること半刻が過ぎた。元は猟師であるため待つのは辛くない。
　だが、獲物が現れるとやはりほっとする。
　緩まないようにしながら、村を突っ切ってくる集団を見据えていた。
　一町、に迫ったところで胴を狙って銃丸を放つ。
　相手は前のめりになって倒れた。
　しかし、集団の動きは止まらない。破落戸たちは騒然となりながらもこちらに向かってくる。