陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「こやつら、恐らくは手前と同じ元は忍びの者でしょうな」
 いつの間に伊平治が戻ってきている。
「ここにいると残りの者とかち合うことになりましょう」
 すこし離れた場所に隠れてようすをうかがわねば、という伊平治の言葉にしたがい栄助はともに五町ほど離れた川の河原にある岩の陰に隠れた。
「隙があれば宰領らしき者を撃ち殺してくだされ」
 伊平治が中々無茶な注文をつけた。
 だが、人間とは面白いものだ。遠くからようすを見ていると、誰が手下で誰が宰領なのかよくわかった。仲間の死体のもとにやって来た破落戸たちが死体を検分する者、あたりを警戒する者、指示をする者に別れたのだ。
 風を考慮し栄助は鉄砲を少し傾けて引金を絞る。とたん、周囲に指示を飛ばしていた破落戸が倒れた。
 周囲が慌てているうちに栄助は早合を遣う。どうやら、匂いや音でこちらを探知できる忍びの者はやつらの中にはいないようだ。
 発砲、二十ほど数を数える間を一射目から開けて鉄砲を撃つ。腕の立ちそうな浪人を狙った。どれだけ剣の腕が立っても鉄砲で遠くから狙い撃たれれば無力だった。
 残りは浪人がひとりと、破落戸が五人――。
 そう思っていると間道を駆けてきた者たちがいた。
 助左衛門たちだ。彼らが銃声を合図に駆けつけたのだ。
 彼らは委縮した破落戸たちに一斉に襲いかかる。
 銀弧が何度も生じ、やがて敵は全員倒れた。
 むろん、栄助と伊平治も見ていただけではなく戦いに加わった。
 ひとりの胴を薙ぎ払った。防がれても右、左と袈裟斬りに斬撃を加える。さらに大きく踏み込んで右袈裟に斬った。刹那、左横からの一撃を受け流し、横薙ぎに首を斬る。
 そうして剣戟を交わしているうちに全体の戦いは栄助たちの勝利に向かった。
 敵が数を減らし、最後の相手は意味不明な悲鳴をあげて命乞いか長脇差を投げ放ったのだ。
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