94 / 137
94
しおりを挟む
「こやつら、恐らくは手前と同じ元は忍びの者でしょうな」
いつの間に伊平治が戻ってきている。
「ここにいると残りの者とかち合うことになりましょう」
すこし離れた場所に隠れてようすをうかがわねば、という伊平治の言葉にしたがい栄助はともに五町ほど離れた川の河原にある岩の陰に隠れた。
「隙があれば宰領らしき者を撃ち殺してくだされ」
伊平治が中々無茶な注文をつけた。
だが、人間とは面白いものだ。遠くからようすを見ていると、誰が手下で誰が宰領なのかよくわかった。仲間の死体のもとにやって来た破落戸たちが死体を検分する者、あたりを警戒する者、指示をする者に別れたのだ。
風を考慮し栄助は鉄砲を少し傾けて引金を絞る。とたん、周囲に指示を飛ばしていた破落戸が倒れた。
周囲が慌てているうちに栄助は早合を遣う。どうやら、匂いや音でこちらを探知できる忍びの者はやつらの中にはいないようだ。
発砲、二十ほど数を数える間を一射目から開けて鉄砲を撃つ。腕の立ちそうな浪人を狙った。どれだけ剣の腕が立っても鉄砲で遠くから狙い撃たれれば無力だった。
残りは浪人がひとりと、破落戸が五人――。
そう思っていると間道を駆けてきた者たちがいた。
助左衛門たちだ。彼らが銃声を合図に駆けつけたのだ。
彼らは委縮した破落戸たちに一斉に襲いかかる。
銀弧が何度も生じ、やがて敵は全員倒れた。
むろん、栄助と伊平治も見ていただけではなく戦いに加わった。
ひとりの胴を薙ぎ払った。防がれても右、左と袈裟斬りに斬撃を加える。さらに大きく踏み込んで右袈裟に斬った。刹那、左横からの一撃を受け流し、横薙ぎに首を斬る。
そうして剣戟を交わしているうちに全体の戦いは栄助たちの勝利に向かった。
敵が数を減らし、最後の相手は意味不明な悲鳴をあげて命乞いか長脇差を投げ放ったのだ。
いつの間に伊平治が戻ってきている。
「ここにいると残りの者とかち合うことになりましょう」
すこし離れた場所に隠れてようすをうかがわねば、という伊平治の言葉にしたがい栄助はともに五町ほど離れた川の河原にある岩の陰に隠れた。
「隙があれば宰領らしき者を撃ち殺してくだされ」
伊平治が中々無茶な注文をつけた。
だが、人間とは面白いものだ。遠くからようすを見ていると、誰が手下で誰が宰領なのかよくわかった。仲間の死体のもとにやって来た破落戸たちが死体を検分する者、あたりを警戒する者、指示をする者に別れたのだ。
風を考慮し栄助は鉄砲を少し傾けて引金を絞る。とたん、周囲に指示を飛ばしていた破落戸が倒れた。
周囲が慌てているうちに栄助は早合を遣う。どうやら、匂いや音でこちらを探知できる忍びの者はやつらの中にはいないようだ。
発砲、二十ほど数を数える間を一射目から開けて鉄砲を撃つ。腕の立ちそうな浪人を狙った。どれだけ剣の腕が立っても鉄砲で遠くから狙い撃たれれば無力だった。
残りは浪人がひとりと、破落戸が五人――。
そう思っていると間道を駆けてきた者たちがいた。
助左衛門たちだ。彼らが銃声を合図に駆けつけたのだ。
彼らは委縮した破落戸たちに一斉に襲いかかる。
銀弧が何度も生じ、やがて敵は全員倒れた。
むろん、栄助と伊平治も見ていただけではなく戦いに加わった。
ひとりの胴を薙ぎ払った。防がれても右、左と袈裟斬りに斬撃を加える。さらに大きく踏み込んで右袈裟に斬った。刹那、左横からの一撃を受け流し、横薙ぎに首を斬る。
そうして剣戟を交わしているうちに全体の戦いは栄助たちの勝利に向かった。
敵が数を減らし、最後の相手は意味不明な悲鳴をあげて命乞いか長脇差を投げ放ったのだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
渡世人飛脚旅(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
牛馬走
歴史・時代
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)水呑百姓の平太は、体の不自由な祖母を養いながら、未来に希望を持てずに生きていた。平太は、賭場で無宿(浪人)を鮮やかに斃す。その折、親分に渡世人飛脚に誘われる。渡世人飛脚とは、あちこちを歩き回る渡世人を利用した闇の運送業のことを云う――
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
忍び働き口入れ(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)
牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)藩の忍びだった小平治と仲間たち、彼らは江戸の裏長屋に住まう身となっていた。藩が改易にあい、食い扶持を求めて江戸に出たのだ。
が、それまで忍びとして生きていた者がそうそう次の仕事など見つけられるはずもない。
そんな小平治は、大店の主とひょんなことから懇意になり、藩の忍び一同で雇われて仕事をこなす忍びの口入れ屋を稼業とすることになる――
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
安政ノ音 ANSEI NOTE
夢酔藤山
歴史・時代
温故知新。 安政の世を知り令和の現世をさとる物差しとして、一筆啓上。 令和とよく似た時代、幕末、安政。 疫病に不景気に世情不穏に政治のトップが暗殺。 そして震災の陰におびえる人々。 この時代から何を学べるか。狂乱する群衆の一人になって、楽しんで欲しい……! オムニバスで描く安政年間の狂喜乱舞な人間模様は、いまの、明日の令和の姿かもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる