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 そういう訳ですでに湯につかった者は近くの賭場にくり出し、そうでない者も女郎屋に出かけることにした。ただし、栄助を除いてだ。
 そして、助左衛門がもどってきた。
「みんなは?」「出かけたよ」
 彼の問いかけに栄助は心の臓が高鳴るのを感じた。
「そうか」
 助左衛門は部屋の中央で仰向けになる。
 しばらく無言の時間が流れた。が、やがて、
「また、助けられちまったな」
 と助左衛門が複雑な声で告げる。
「ん?」と聞き返すと「昨日の村でのことだよ」と助左衛門は少し声を高くした。
「故郷のお前のもとに出向いたのは、腕利きの浪人に追いかけられてどうしようもなくなってのことだった。だから、“また”なんだよ」
「ああ」
 栄助は得心がいってうなずいた。
 ふたたび沈黙が下りる。先に口を開いたのはやはり助左衛門だった。
「前に俺が渡世人になった訳を気にしてたよな」
 助左衛門の言葉に栄助はうなずく。
「借財でお袋が女郎に身をやつし、親父が首を括ったからだ」
 返ってきた内容に栄助は息を呑んだ。
「ここから先の話を聞くはてめえ次第だ、栄助」
 え、と栄助は助左衛門の顔を凝視する。
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