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 が、
「おい、おまえらなにやってんだ」
 子どもが正義感に溢れる声で叫んだ。まだ、具体的に何が行われているかは理解していないだろうが、女人が嫌がっていることだけはわかったのだろう。
「止めろ」
 子どもが金切り声で言葉をかさねた。
 それで、男たちが視線をこちらに向ける。子どもを背負った男がひとり、その光景を目の当たりにしたのだろう彼らの目もとが笑った。
 まずい――栄助は背筋が寒くなるのを感じる。
 そんなこちらに対し、男のひとりが女子を押さえたまま残りふたりがこちらにゆっくりと近づいてくる。
「なんで、逃げるの」
 子どもが驚愕の声をもらした。
 だが、これが栄助にできる精一杯だった。子どもを負ぶって全力で走る。
 自分の長脇差の腕ではとても三人の男を相手にはできない。子どもを放り出さなかったのがせめても良心だ。
「逃げるなよお、戦えよお」
 子どもが非力な拳で栄助の背中を叩いた。
 無理だ、俺には――栄助は声に出すのが恥ずかしく無言で返す。
 しばらくして、栄助は肩越しに背後をふり返った。木陰がもはや視界から消えていた。随分と距離を稼いだようだ。
 代わりに涙目になった子どもと目が合った。
「下ろせよ、この臆病者」
「おまえ、自分じゃ歩けないだろ」
 胸に痛みをおぼえながら栄助は返事をした。
 こうなったら、手前の宿場に戻るしかなかった。子どものためにもそうするしかない。
 もし、この場に助左衛門たちがいたら――結果は違ったのかもしれない。
 だが、ここにいるのは無力な自分だけだ。鉄砲では三人の男たちを同時や立てつづけに仕留めるのは不可能だ。
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