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「おまえの鉄砲の腕は桁外れのものだ。それを効率よく金に換えられるのはこの稼業だと手前は思う」
伊平治が助左衛門とは違った切り口で思い直すよう告げてくる。
「俺は金はそんなに欲しくない」
もともと慎ましい暮らしを送っていたせいで、金を使うということに慣れていなかった。
「なれど、江戸で暮らすにもそれなり金子が入用であろう」
「五十両もあれば充分だろう」
伊平治が言葉をかさね説得する。栄助は首をふってそれを退けた。
「もはや、翻意をうながすのは無理でござろう」
そこに小次郎が口を挟んだ。
「栄助は昨夜からかようなことを申して居った。となれば、もはや一時の感情ではなかろう」
擁護しているようにも聞こえる小次郎の言葉に栄助は感謝の念をおぼえた。
「少なくとも、頭を冷やす時が入用だな」
そこで猪助が結論をくだした。
「栄助、考えが変わったらあっしらの仲間にふたたび加わりなせえ」
「親分、ありがとうございます」
栄助は猪助に頭をさげた。
仲間のうち助左衛門はまだ納得がいかないようすだが、親分が決めたことに口ははさめないようだった。
その後、向かう方角が同じだったため時間をずらして栄助は助左衛門たちに遅れて宿場を発った。
伊平治が助左衛門とは違った切り口で思い直すよう告げてくる。
「俺は金はそんなに欲しくない」
もともと慎ましい暮らしを送っていたせいで、金を使うということに慣れていなかった。
「なれど、江戸で暮らすにもそれなり金子が入用であろう」
「五十両もあれば充分だろう」
伊平治が言葉をかさね説得する。栄助は首をふってそれを退けた。
「もはや、翻意をうながすのは無理でござろう」
そこに小次郎が口を挟んだ。
「栄助は昨夜からかようなことを申して居った。となれば、もはや一時の感情ではなかろう」
擁護しているようにも聞こえる小次郎の言葉に栄助は感謝の念をおぼえた。
「少なくとも、頭を冷やす時が入用だな」
そこで猪助が結論をくだした。
「栄助、考えが変わったらあっしらの仲間にふたたび加わりなせえ」
「親分、ありがとうございます」
栄助は猪助に頭をさげた。
仲間のうち助左衛門はまだ納得がいかないようすだが、親分が決めたことに口ははさめないようだった。
その後、向かう方角が同じだったため時間をずらして栄助は助左衛門たちに遅れて宿場を発った。
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