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「おぬし、稽古の最中に余計なことを考えておられるな」
小次郎に見抜かれてしまった。彼は不機嫌な表情をさらに険しいものにしている。
「それは」
栄助は相手につたえるべきか分からず声を詰まらせた。
「それがしは好きこのんで渡世人をしておらぬ、なにを思案しておるか話してみぬか」
小次郎の言葉に栄助は逡巡し、
「実は」
と口を開いた。
「お菊の死に俺は責任を感じておる」
「陣借り無宿に加わった時点で、各々が死を覚悟しているはずだ」
「だが、俺はお菊のように無惨に命を落とすことが恐ろしいとも思った」
「それは」
小次郎は眉間に皺を寄せて言葉を探す。そして、
「仕事をこなすうちに腹が決まってくる」
と言葉をかさねた。
「仕事をこなすうちに」
くり返したものの、己がこの稼業をつづけていくことに現実感を感じられなかった。
「陣借りの仕事、承諾しかねるか?」
小次郎の確認に、栄助はゆっくりとだが首を縦にふる。
そして一晩、うなされて寝ては起きることをくり返すうちに栄助の思いはひとつの方向に傾いていった。
朝、朝餉のためにみながいびつな車座になって顔を合わせたところで、
「親分、実は話がある」
と栄助は訴え出ていた。
「なんだ、どうした」
猪助がどこかこちらの胸中を理解している顔でたずねてくる。
小次郎に見抜かれてしまった。彼は不機嫌な表情をさらに険しいものにしている。
「それは」
栄助は相手につたえるべきか分からず声を詰まらせた。
「それがしは好きこのんで渡世人をしておらぬ、なにを思案しておるか話してみぬか」
小次郎の言葉に栄助は逡巡し、
「実は」
と口を開いた。
「お菊の死に俺は責任を感じておる」
「陣借り無宿に加わった時点で、各々が死を覚悟しているはずだ」
「だが、俺はお菊のように無惨に命を落とすことが恐ろしいとも思った」
「それは」
小次郎は眉間に皺を寄せて言葉を探す。そして、
「仕事をこなすうちに腹が決まってくる」
と言葉をかさねた。
「仕事をこなすうちに」
くり返したものの、己がこの稼業をつづけていくことに現実感を感じられなかった。
「陣借りの仕事、承諾しかねるか?」
小次郎の確認に、栄助はゆっくりとだが首を縦にふる。
そして一晩、うなされて寝ては起きることをくり返すうちに栄助の思いはひとつの方向に傾いていった。
朝、朝餉のためにみながいびつな車座になって顔を合わせたところで、
「親分、実は話がある」
と栄助は訴え出ていた。
「なんだ、どうした」
猪助がどこかこちらの胸中を理解している顔でたずねてくる。
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