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金で飼われて人を斬るか――これほどの落ちぶれ具合はない。
だが――このまま浪人をつづけても自分の運が上向くとは思えなかった。
それに近々、賭場でこさえた借金の期限がやってくる。
「よかろう、この腕買われてやる」
浪人は皮肉な口調で告げた。
「ありがとうございやす。あっしの名は平兵衛ともうしやす、お見知りおきを」
男は頭をさげ、
「それではついて来てくんなせえ」
と言葉をかさねた。
男につづいて外に出ると、自分のような浪人態の男が待っていた。
別に気にする相手でもない――相手の居ずまいから腕のほどが優れていることは知れたが、元より浪人は命が惜しくないから関係ない。
平兵衛が向かったのは商家が軒を連ねる一角だった。一件の宿へと足を踏み入れていく。つづいて浪人ふたり、子分ふたりが中に入った。
二階の奥、部屋で待っていたのは武士の身なりをした男だ。
「遅いぞ」
相手の不機嫌な言葉に、
「もうしわけありやせん」
平兵衛は頭をさげ下座に腰をおろす。
「おぬしに得意の人狩りの仕事を頼みたい」
武士が重ねた告げた言葉に浪人は、む、と内心唸った。
人狩り、それはやくざの人脈を生かして人探しをすることを言った。
これこれこういう無宿を探してほしい、と武士は告げる。
だが――このまま浪人をつづけても自分の運が上向くとは思えなかった。
それに近々、賭場でこさえた借金の期限がやってくる。
「よかろう、この腕買われてやる」
浪人は皮肉な口調で告げた。
「ありがとうございやす。あっしの名は平兵衛ともうしやす、お見知りおきを」
男は頭をさげ、
「それではついて来てくんなせえ」
と言葉をかさねた。
男につづいて外に出ると、自分のような浪人態の男が待っていた。
別に気にする相手でもない――相手の居ずまいから腕のほどが優れていることは知れたが、元より浪人は命が惜しくないから関係ない。
平兵衛が向かったのは商家が軒を連ねる一角だった。一件の宿へと足を踏み入れていく。つづいて浪人ふたり、子分ふたりが中に入った。
二階の奥、部屋で待っていたのは武士の身なりをした男だ。
「遅いぞ」
相手の不機嫌な言葉に、
「もうしわけありやせん」
平兵衛は頭をさげ下座に腰をおろす。
「おぬしに得意の人狩りの仕事を頼みたい」
武士が重ねた告げた言葉に浪人は、む、と内心唸った。
人狩り、それはやくざの人脈を生かして人探しをすることを言った。
これこれこういう無宿を探してほしい、と武士は告げる。
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