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「それにしても、栄助以外が鉄砲を撃つのが心配ね」
「これはばっかりはやってみねえとな」
 お菊の心配に、助左衛門が肩をそびやかした。
「攪乱のほうは伊平治殿に任せたでござる、上手くやってくれないと困る」
「任せな、足跡を自在に操って相手を惑わせてやるよ」
 小次郎の言葉に伊平治が任せろと胸を叩いた。
 大名行列の追跡を初めてからこっち、渡世人とは思えない規則正しい生活を栄助たちは送っていた。
 まず、渡世人だが酒は飲まない。そして就寝、起床時間が早かった。
 この日も酒精は口にせず、栄助たちは早々に眠りにつく。

 翌日、栄助たちは大名行列に先行して動いた。
 街道の脇に森が広がる場所を見つけて、ここに半町おきにひとりずつが隠れた。
 みなには森の外れではなく少し手前に隠れるよう注意する。こうすることで身を隠すことができるのだ。
 街道までの距離はやくざの親分を狙ったときとは違い、一町の隔たりがあった。
 実は昨日、夜のうちに驟雨があった。
 狙いが低くなる、それを思案のうちに入れなければならない。
 四半刻ほど待っていると、大名行列の先頭が視界に入ってきた。
 標的の大名家は石高五万石だと猪助から教えられていた。
 駕籠が射程にまで来るまでにはそれなりの時間がかかる。だが、栄助は猟師の仕事を通して待つことには慣れていた。
 だが、助左衛門たちはどうだ――心配だが、今はそれをつたえている場合ではない。
 不安を押し殺しているうちに警固に囲まれた人影が視界に入ってくる。やがて、栄助にとって正面の位置にやって来た。
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