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「むろん、礼も弾む。百両支払おう」
「ほう、それは豪儀な」
「その代わり、仔細は語らぬ」
「なるほど」
 殿さまの命を奪うやり取りが容易く決められた。
 栄助にとって百両はとほうもない金だが、それが一大名の首代としてふさわしいかは見当がつかない。
「今、大名行列は三つ先の宿に泊まっておる。いかように始末をつけるかはそなたら次第だ」
「なるほど」
 武士の言葉に猪助がうなずく。
 その間、仲間たちはやり取りを見守るだけだ。面倒な話は頭分がすることに決まっていた。
「前金で二十五両だ」
「成功したのにあとの金を払わなかったら、江戸の大目付の邸に文を投げ込みますぜ」
「きちんと支払う」
 二十五両を猪助に渡し武士は大きくうなずく。
「されば、頼んだぞ」
 そう言い残し、武士は去って行った。
「家中の政を改めようとする主君が家臣に命を狙われる、そんなところかね」
 猪助が独語じみた言葉をつぶやくのに栄助はふたたび衝撃をおぼえる。
 家臣が主君を狙うとは――だが、猪助のせりふには説得力があった。
「こうなりゃ、飲むのは止めだ。鉄砲の稽古だ」
 猪助の発言に、鉄砲の稽古、と栄助たちは首をかしげた。
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