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 彼も清算を済ませて外に出たがやはり遅かった。既に彼らの姿はなかった。
 仕方なく、旅籠の部屋で待っていると、
「おい、大変なことになった」
 と明け方になって朋輩が戻ってきた。
「いかがした?」
 とたずねると、
「友之助様の一行が人を殺めた。相手はたぶん、隣の宿場が縄張りのやくざ者だ」
 早口になって朋輩は口を開く。
 なに、と彼も相手と同じく顔色が変わった。
 自身の考えでは説得して連れ戻すつもりだったのだ。それが友之助が人殺しとなると。
「上にお伺いを立てたほうがよいでござるな」
「されど、上役はかつての反友之助派の」
「致し方あるまい」
 朋輩の言葉を彼は重々しく遮った。

 夜明け後、栄助たちは酒宴を開いた。仕事の成功の祝杯をあげたのだ。
「武士なんてのはろくなもんじゃないね」
 お菊がやや呂律のまわらない口調で言った。すでにそれだけの時、飲み続けていた。ちなみに、栄助はほとんど酒に口をつけていない。こんな時間の酒杯のため、どうにも舌が受け付けないのだ。
「貧乏暮らし。その上、政争に巻き込まれてお家取り潰し」
 絡み酒のせいでお菊を男たちは半円状に遠巻きにしている。
「おらあ、そろそろ引退かなあ。全力で体を動かすときつくっていけえねえ」
「またまた、さような世迷い事を申される。親分はまだまだいけるでござろう」
 猪助と小次郎の会話に、
「まあ、四十で隠居は早かろう」
 伊平治が口を挟む。
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