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「わたしは、兄さんが側に居て欲しかった」
 ついに妹は泣き出した。
 俺は――言いかけて栄助は首を横にふる。口にしかけた言葉の代わりに、
「幸せになってくれ」
 それだけを告げた。
 瞬間、妹はその場にうずくまってしまった。

 それから一日近くが経ち、葬式の場にいる。
 だが、故郷であるがずの場所がひどくよそよそしく感じられた。

    第二章

    一

 夜明けと同時に荒れ寺の本堂の床から栄助は体を起こした。
 外に出ると、白々とした清浄な光に世界が照らされている。純白の光に照らされている、自分が、まるで穢れているかのように感じた。
 いや、穢れているのか――栄助はそんな思いを抱く。
 自分が昨夜、恨みで人を殺した。幼馴染の仇討といってもそのことに違いはない。
 棒立ちで朝日を眺めていると頭の中がこんがらがってくる。
「栄助、眠れなかったのか」
 そこに助左衛門が横に並んだ。
 栄助は首を横にふる。

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