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そこへ、
「夜中に目立つ焚火たあ、死ぬ覚悟ができたようだなあ」
山道から複数の男たちが姿を現した。声を発したのは先頭を行くのは上背のある三白眼の剣法家だった。助左衛門たちを窮地に立たせているのもこの男だ。
「おまえらこそ死ぬ覚悟はできたのか、ええ」
助左衛門たちはゆっくり焚火から離れる。
代わりに男たちが近づいてきて火に照らされる。闇に彼らの姿が浮かび上がった。
刹那、風切り音がする。
ひとり、ふたり、と男たちは首に棒手裏剣を喰らった。
が、肝心の剣術家は攻撃をとっさに躱す。
とたん、夜気が激しく震えた。銃声だ。銃丸を受けて男がその場に倒れた。悲鳴もあげられない。
男たちは半数になっていた。だが、実際の数の減少以上の衝撃が彼らを襲ったはずだ。
呆然となる彼らに助左衛門が長脇差を伊平治が打刀を構え、菊は短刀を握って突貫をかけた。肉を深々と貫く感覚を助左衛門はおぼえた。
「く、くそ」
刺された男が弱々しく呻く。
そして、残りの男たちとほぼ同時に息絶えた。全員、助左衛門たちに刺されていた。
長脇差を力を込めて抜く。そして、寺の本堂の屋根を見やった。
闇に沈んでほとんど分からないが、そこには屋根と一体化した栄助がいるはずだ。鉄砲を撃ったのは彼だ。
ありがとう――直接言ったところれ嫌がられるせりふを胸のうちで吐く。
それから、助左衛門はおろくの元に近寄った。
やはり――襲ってきたのは渡世人の類ではなかった。みなが二本差しだったのだ。つまり、侍だ。
心当たりはある。仲間のひとりだ。
だが、頭は仲間と決めてたら見捨てない、というのを旨にしている。仮に仲間を見捨てないことで仲間が死ぬことになっても信念を守るつもりだ。
おかげで、栄助を巻き込むことになった――助左衛門は小さくため息をつく。
「夜中に目立つ焚火たあ、死ぬ覚悟ができたようだなあ」
山道から複数の男たちが姿を現した。声を発したのは先頭を行くのは上背のある三白眼の剣法家だった。助左衛門たちを窮地に立たせているのもこの男だ。
「おまえらこそ死ぬ覚悟はできたのか、ええ」
助左衛門たちはゆっくり焚火から離れる。
代わりに男たちが近づいてきて火に照らされる。闇に彼らの姿が浮かび上がった。
刹那、風切り音がする。
ひとり、ふたり、と男たちは首に棒手裏剣を喰らった。
が、肝心の剣術家は攻撃をとっさに躱す。
とたん、夜気が激しく震えた。銃声だ。銃丸を受けて男がその場に倒れた。悲鳴もあげられない。
男たちは半数になっていた。だが、実際の数の減少以上の衝撃が彼らを襲ったはずだ。
呆然となる彼らに助左衛門が長脇差を伊平治が打刀を構え、菊は短刀を握って突貫をかけた。肉を深々と貫く感覚を助左衛門はおぼえた。
「く、くそ」
刺された男が弱々しく呻く。
そして、残りの男たちとほぼ同時に息絶えた。全員、助左衛門たちに刺されていた。
長脇差を力を込めて抜く。そして、寺の本堂の屋根を見やった。
闇に沈んでほとんど分からないが、そこには屋根と一体化した栄助がいるはずだ。鉄砲を撃ったのは彼だ。
ありがとう――直接言ったところれ嫌がられるせりふを胸のうちで吐く。
それから、助左衛門はおろくの元に近寄った。
やはり――襲ってきたのは渡世人の類ではなかった。みなが二本差しだったのだ。つまり、侍だ。
心当たりはある。仲間のひとりだ。
だが、頭は仲間と決めてたら見捨てない、というのを旨にしている。仮に仲間を見捨てないことで仲間が死ぬことになっても信念を守るつもりだ。
おかげで、栄助を巻き込むことになった――助左衛門は小さくため息をつく。
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