陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 栄助は思案を巡らせた。
「いや、殺さない」
 考えた末、ゆっくりと首を横にふる。
 追い払うことはできても、やはりそこはかつての幼馴染だ。殺すことなどできなかった。
 だが、
「じゃあ、彦兵衛を殺したやつを殺すか」
 という声には心が動いた。
「それは」
 様々な場面での彦兵衛の顔が思い浮かぶ。嫁を早くもらえ、と心配する声が脳裏に甦った。否、と即答できない。
「考える時間をくれ」
「わかった」
 うなずいた助左衛門だったが、
「あまり、時間はないぞ」
 と眉間に皺を寄せて告げる。
「手違いだろうが人を殺めた以上、ここいらには長くいられない。相手方はけりをつけようと総出でかかってくるはずだ」
 助左衛門の言葉に、栄助は既に自分が半ば巻き込まれていることを悟った。
 わかった、と力のない声でこたえる。

 栄助は役人や岡っ引の目を逃れて家にもどった。
 顔色の悪い兄を見て妹はひと目で何かがあったことを悟った様子だった。
「どうしたの兄さん?」
 妹の問いかけに、彦兵衛の死という事実が重すぎてとっさには答えられない。
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