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 なにしろ、陣借り無宿と称してヤクザの出入りやその他の殺しに助左衛門は手を染めているのだ、そこらの男が手出しするにはあまりにも危険な相手だった。
 だが、旅籠にたどりついたときには手遅れだった。
 表に戸板に寝かされ筵をかけられた彦兵衛の姿があるのが目についた。
 むろん、顔が隠れているから最初は誰か分からない。
 だが、もしや、という思いに駆られた慌てて近寄り筵を剥いで体の力が抜けた。
「彦兵衛」
 自然と幼馴染の名が口から漏れた。
 だが、蒼白くなった彼は声を発さず目を閉じていた。その場に座り込んでると、
「お前さん、おろくの知り合いかい?」
 と中年の男が声をかけてきた。
 頭がまわらない。一拍の間ののちうなずいた。
「おろくの仁が渡世人の部屋に上がったんだが、その渡世人が慌てて逃げて行くのを見た者がいるよ」
 まさか、助左衛門が彦兵衛を殺したのか。全身に痺れるような感覚が走った。
 だが、それ以外に誰がいる?
 それもまた事実だった。
 とにかく、助左衛門を探さないと。そう考え、無意識のうちに体が動いていた。
 逃げるならどこに行く、と考えたところ宿場の外れに向かうはずだ、と考え思った通りの場所で新しい足跡、人気のあるとこをから離れようとする足跡を探した。
 やがて、「あった」と栄助はつぶやく。
 足跡をたどっていくと、外れにある荒れ寺へとついた。
 山道の頂上に座る助左衛門の姿がある。
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