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「因果なもんだな、おれたちは」
「因果でない無宿がいるものか」
 助左衛門の言葉に、伊平治は眉をひそめて応じた。彼は神経質な手つきで伸びてきた髭を伸ばす。
「そうか、それもそうだな」
 伊平治の言葉に、助左衛門はおかしくなって薄ら笑いを浮かべた。

● ● ●

 今日は狩りの日和だった。
 天気の日は薄暗い森の中にいる獣を光が反射してぼやけさせてしまうが、薄曇りの日は全体に同じ明るさになるから猟に適しているのだ。
 皮肉なことだ――携えた鉄砲が汗ばむのを感じながら栄助は思う。
 人を殺すのに適した日があるとは。
 顔もびっしょり汗に濡れているが誰にも見咎められない。
 ひとりで山狩りを行っていた。大勢で追い立てるのではなく、村の衆に先行して単独で殺人者を追っていた。
 人が近くにいると標的を逃すかもしれない、という言が名主に受け入れられたのだ。
 名主は、
「そう言っておいて、人殺しを逃がす気じゃないか。殺す意気地がないんだろう」
 と言っていた。
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