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「欲深な奴輩だ」
 ため息混じりに告げた。
 これに福丸は戸惑いを露わにする。どういうことだ、と将門は疑問をおぼえた。だが、次の福丸のせりふでその答えはわかった。
「欲深な者に将門は仕えているの」
「まあ、そうだ」
 痛いところ突かれて将門は唇を曲げる。
「なんで」
 さらに、触れて欲しくないことに福丸は童らしく踏み込んできた。
「上達部に名簿を奉げれば官職が得られるやもしれぬからだ」
「そうなんだ」
 なんだかがっかりしたような顔を福丸は見せる。
「つまらない事由でおまえは摂政に仕えているな」
「つまらなくなどない。官職は兵に権威をもたらす。さすれば、故郷で近隣の兵などとの争いにも有利に働くのだ。つまりは、兵の家のためになるのだ。そもじが里のために働いているのと同じだ」
 のふに対し、自分でもムキになっていると思いながらも将門は声を発した。忠平に仕えることに疑問をおぼえるようになっただけに的を射たのふのせりふは胸に深く突き刺さったのだ。
「怒るな。怒るな、小次郎」
 のふがやや辟易したようすでこたえる。
「福丸、都には面白いことがほかにもあるぞ」
「え、なに、なに」
 そんな彼らをよそに在信が福丸にひょうげた顔つきで告げる。
「それはな、公家は犬や鳥が邸に現れただけで穢れただのと騒ぐのだ」
「そんなこと気にしてたら暮らしていけないじゃないか」
 明かされた事実に、集落のまわりにいくらでも禽獣の類がいる場所で育った福丸は片眉をあげていぶかしげな声を出した。
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