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「うぬら、何者だ」
叫びながら、将門は野太刀を引き寄せた。
ほぼ同時にのふも動いていた。福丸だけが、動作が遅れ木太刀を掴みそこねる。
「我らは右大臣より遣わされた黄泉の死者よ」
「痴れ者が、正体を明かしてなんとする」
「よいではないか、清輔殿。殺してしまえば余人にことの次第を話すことも叶わぬ」
侵入者のひとりが声を荒げるのに、ほかの者たちは「なにを神経質な」といった表情を浮かべた。
「さればそろそろ」
「あの世に送ってやる」
清輔ではない男たちがふたり、同時に襲ってきた。
抜刀一閃、将門はみずからが編み出した技を先手の敵にぶつける。
果たして、それは見事に成功した。
斬られる前に男は「抜いてもおらぬ剣で何をする気だ」と嗤っていたが、腹から肩にかけて逆袈裟の一撃を受けて絶命する。
紫電一閃、さらに後続の男を二の太刀で袈裟斬りに斬られ仲間の後を追うことになった。
さらに、視界の端でのふが野太刀でこちらと同じく二人の男を始末するのを認める。将門の手際に一党は圧倒されて動きが鈍っていた。
それにしても在信はどこだ――将門は内心、首をひねった。
刃風一颯、敵のひとりが滑るような足運びで近づいて斬撃をくり出す。
真正面から将門は刃を交えた。本来なら、後から刃を乗せた彼の一撃が相手に届くはずだった。
が、刃の鎬をあやつり相手はこちらの剣尖をそらした。切り結び終えてやっと将門はその可能性に気づいた。
叫びながら、将門は野太刀を引き寄せた。
ほぼ同時にのふも動いていた。福丸だけが、動作が遅れ木太刀を掴みそこねる。
「我らは右大臣より遣わされた黄泉の死者よ」
「痴れ者が、正体を明かしてなんとする」
「よいではないか、清輔殿。殺してしまえば余人にことの次第を話すことも叶わぬ」
侵入者のひとりが声を荒げるのに、ほかの者たちは「なにを神経質な」といった表情を浮かべた。
「さればそろそろ」
「あの世に送ってやる」
清輔ではない男たちがふたり、同時に襲ってきた。
抜刀一閃、将門はみずからが編み出した技を先手の敵にぶつける。
果たして、それは見事に成功した。
斬られる前に男は「抜いてもおらぬ剣で何をする気だ」と嗤っていたが、腹から肩にかけて逆袈裟の一撃を受けて絶命する。
紫電一閃、さらに後続の男を二の太刀で袈裟斬りに斬られ仲間の後を追うことになった。
さらに、視界の端でのふが野太刀でこちらと同じく二人の男を始末するのを認める。将門の手際に一党は圧倒されて動きが鈍っていた。
それにしても在信はどこだ――将門は内心、首をひねった。
刃風一颯、敵のひとりが滑るような足運びで近づいて斬撃をくり出す。
真正面から将門は刃を交えた。本来なら、後から刃を乗せた彼の一撃が相手に届くはずだった。
が、刃の鎬をあやつり相手はこちらの剣尖をそらした。切り結び終えてやっと将門はその可能性に気づいた。
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